『六本木クラス』の“次が観たくなる”様々な仕掛け プロデューサーに日本版の狙いを聞く

『六本木クラス』西山Pに聞く手応え

 竹内涼真が主演を務める木曜ドラマ『六本木クラス』(テレビ朝日系)が物語の折り返しを迎え、さらなる盛り上がりを見せている。

 本作は、2020年にNetflixで配信され日本でも大ブームを巻き起こした韓国ドラマ『梨泰院クラス』の原作漫画を翻案した日韓共同プロジェクト。舞台となる街を六本木に設定した日本版という位置付けだ。

 リメイクにあたり放送前のネットでの風当たりは強かった。それは『梨泰院クラス』が、多くの人々から絶賛され、今もなお愛され続けているドラマだからだ。つまりは最初から視聴者の求めるクオリティのハードルは高く、否が応でも『梨泰院クラス』と比べられる運命にあるということになる。6月に開かれた制作発表記者会見にて、メインキャストの1人である香川照之の口からは「本家を超えることができるように」という気概に満ちた言葉も飛び出していた。

 六本木を主なロケ地として撮影を始め、現在で4カ月目。プロデューサーの西山隆一氏は、ほぼ毎日行われる撮影と編集、毎週の放送を見届ける日々を過ごすうちに、いつの間にか『梨泰院クラス』への意識はなくなっていったという。もちろん原作へのリスペクトはあれど、自分たちが作っているのはあくまで日本版。竹内は自身のInstagramに「リメイクとはなんなのか」について、「僕らが重要視しなきゃいけないのは、比較では無く、どうやったら六本木という舞台でこの素晴らしい原作を表現できるのか」と投稿している。西山氏も竹内の考えに同意した上で、「日本人の俳優が日本の六本木という街で演じることによってどんな作品になるのかを観てもらいたいですし、彼が現場で日々そういった意識でいてくれているのは感じますね」と撮影を通しての実感を話す。

 物語は簡潔に言えば、宮部新(竹内涼真)による、長屋ホールディングス会長・長屋茂(香川照之)への復讐劇。ダブルヒロインである楠木優香(新木優子)、麻宮葵(平手友梨奈)との三角関係など、大筋は『梨泰院クラス』のストーリーをそのまま踏襲している。そもそもリメイクをしようという考えに至った原点には、原作のストーリーやセリフの素晴らしさがある。『梨泰院クラス』の物語をただなぞっていっても二番煎じになりかねない、かといって原作から大きく異なる作風にしても愛が感じられず原作ファンが離れていくという難しい塩梅だ。どちらにしてもバッシングを受けることは想定内。それならば、原作をリスペクトしながら日本版にローカライズした独自のオリジナル作品を作る/作っているというのが制作陣に生まれた思いだった。

 韓国と日本とでは、文化や制度、価値観の違いがあり、そういった部分も『六本木クラス』には細かく反映されている。本作はオーナーや経営者など、ビジネス的側面が強いドラマ。国を日本に置き換えた時に不自然なことはないか、各分野の専門家に監修を依頼しているという。特に、新が経営する「二代目みやべ」店員・綾瀬りく(さとうほなみ)のトランスジェンダーは、後半パートにおいて重要になってくるポイント。『六本木クラス』第4話では『梨泰院クラス』とはまた違った表現や、りくの回想シーンが足されている。西山氏は「この企画の立ち上げ当初から日本と韓国とでトランスジェンダーというものに対する温度感は全く違うということを話していました。日本ではLGBTに対してあそこまであからさまに嫌悪感を表明することはないと思っています」として、この後の展開で、りくを中心に起こっていく出来事を含めて細かなニュアンスやリアクションなどは変更しているという。

 『六本木クラス』は全13話となることがオンエア前から発表されている。『梨泰院クラス』は全16話かつ1エピソードがCM抜きで1時間以上の尺があり、最終話に関しては90分に及ぶ長尺となっている。西山氏は日本から見るともう少しテンポを出せるシーンを詰めていったり、漫画原作には出てこないキム・トニー(クリス・ライアン )を未登場にすることによって、「原作ファンが大切に思っているシーンを満遍なく収めながら、ちょうどいい時間で観られる全13話になっているんじゃないかと思っています」とより分かりやすくスピーディーに観ることができるのではないかと話す。

 また『六本木クラス』という作品は、1話完結のドラマが多い現在のテレビ朝日木曜ドラマ枠としては珍しい連続ドラマへの挑戦でもある。そこで鍵になってくるのが、いかにして“次が観たい”と思ってもらえる終わり方にするかだ。葵が優香の顔を鷲掴みにして新とのキスを阻止する「ディフェンス!」の名シーンなどはそのまま第4話のラストに据えながら、筆者が驚いたのは、茂がみやべに乗り込んでくるシーンを通過して長屋の専務・相川京子(稲森いずみ)と手を組むまでの流れを一気に見せる第5話のストーリー構成だった。どこからどこまでを1話とするかは、脚本の徳尾浩司をはじめ、プロデューサー陣もアイデアを出し合いながら気を遣っている部分だという。

 視聴率、配信ランキング、Twitterトレンドと、現在ドラマの人気/評価を図る様々な指標がある。昔とは違って視聴率が全てではないことは多くの視聴者が理解していることであるはずだが、未だに放送翌日には視聴率が大々的に報じられる変わりない風潮がある。「僕が感じているのは以前ほど視聴率=世間でどれだけ話題になっているか、とはまたちょっと違う指標なのかなと感じています」と語る西山氏は、昔の知人から「『六本木クラス』観ているよ」と連絡をもらったり、街角で人が『六本木クラス』の噂をしているのが聞こえてきたりと、視聴率だけでは捉えきれない人たちが観てくれている実感があるという。その証拠として、『六本木クラス』はTVerドラマランキングにて毎週1位を獲得。初回放送後からTELASAに加えてNetflixでの配信も決まり、韓国をはじめ、世界7つの国と地域で配信されることも予定している。

 Twitterでの反応を四六時中チェックしているという西山氏。「最初は厳しい声も多かったんですけど、最近は『楽しみに毎週観ている』『次が気になる』といった好意的な声が増えてきていますね。当然ですけど『梨泰院クラス』を観てない方も多数いるようで、『桐野(矢本悠馬)と繋がってたのか!』とかピュアなリアクションがあったりして、そういうのは嬉しいですね」と評価が徐々に好転している現状を語る。『六本木クラス』放送開始に合わせて、Netflixのランキングには『梨泰院クラス』が再浮上してきている。『六本木クラス』の次の展開が気になり、『梨泰院クラス』に流れている視聴者がいるのだ。「来週の『六本木クラス』が待ちきれなくて、『梨泰院クラス』で確認したら最後まで観ちゃったといった声がTwitterにはいっぱいありますね。そこから帰ってこないと困っちゃいますけど(笑)」と西山氏は嬉しそうに教えてくれた。

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