『ちむどんどん』“男が救う”図式は続くのか 智×歌子、賢秀×清恵、気になる2組の行く末

『ちむどんどん』“男が救う”図式は続くのか

 もう一組、賢秀と清恵。喧嘩するほど仲が良いという感じのふたりだが、お互い意地っ張りで進展しないなか、東京に営業に出てきたおり、「アッラ・フォンターナ」でランチをしているときに進展の兆しが芽生える。

 清恵には実は失敗した過去があった。賢秀に苛立ちを覚えるのは、彼女が世間知らずでひどい目に遭った経験からなのだろう。でも賢秀はけろりと「償えるさ、人はよ、何回でも人生をやり直せる」と言う。清恵の過去はきっとヘヴィーなものだったろうから、賢秀のような能天気で前向きな人物に救われるはず。

 賢秀も賢秀で、表にはあまり出さないけれど、内心、自分の育った環境へのコンプレックスと、なんとか人生逆転したいプレッシャーと、でもいっこうにうまくいかない(勉強しないからなんだけれど、そこに気づけない)ことへの忸怩たる思いが渦巻いて苦しいけれど、笑っていないとやりきれないのだ、たぶん。強がってきた清恵と道化を装うことで折り合いをつけている賢秀。生き辛さを抱えたふたりが共鳴していく。羽原大介の脚本は、こういう不器用で意地っ張りな人たちの哀愁を描かせると生き生きする。

 せっかく近づいたかと思った賢秀と清恵だが、清恵の元カレらしきチンピラふうの男・涌井(田邉和也)の出現により台無しに。智と歌子はうまくいきそうだが、賢秀と清恵がうまくいくまでにはもう一波乱ありそうだ。最終回は2組の結婚式だろうか。

 いずれにしても、東京で水商売に身を落とした経験に傷ついている清恵と、子供の頃から体が弱くて恋や青春を謳歌することなく大人になった歌子、どこか悲しい影を感じる女性を、同じく人生ままならない男が救うという図式になっている。

 これ、じつは、暢子と和彦もそうは見えないがそうなのだ。子供のときに貧しさゆえ東京にもらわれていくことになった暢子の手を握った和彦。この悲劇的な娘の手を離さないと、大人になって再度和彦は決意して、いまがある。じつは、良子(川口春奈)もそうで、借金返済のために資産家と結婚することを決意した良子を、相思相愛だった博夫(山田裕貴)が奪いに現れた。悲しい目に合っている女性を男性が満身創痍で助ける、女性が主役のドラマながら、男の美学が先立つ、極めて前近代的なドラマなのである。

■放送情報
連続テレビ小説『ちむどんどん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
主演:黒島結菜
作:羽原大介
語り:ジョン・カビラ
沖縄ことば指導:藤木勇人
フードコーディネート:吉岡秀治、吉岡知子
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:松田恭典
展開プロデューサー:川口俊介
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
写真提供=NHK

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