『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』が熱狂を生んだ理由 愛が詰まった美しく優しい世界に寄せて
Netflixシリーズ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』は、自閉スペクトラム症でありIQ164の天才新人弁護士ウ・ヨンウ(パク・ウンビン)が、同僚や親友・家族と支え合いながら、彼女ならではの視点で事件を解決に導く法廷ドラマシリーズであり、韓国のみならず、世界的に話題を呼んだ大ヒット作である。その熱狂は止まるところを知らず、最終話を迎えて1週間以上たった現在もなおランキング上位に留まり続けている。なぜこんなにも魅力的なのか。その理由を探ってみたい。
まず言及すべきは、ヒロインが自閉スペクトラム症であるということ。それゆえの彼女の特異な行動は、独特な自己紹介や、違う空間に入る時に数秒の時間を要することや、大好きなクジラの話になると止まらないことなどキュートそのもので、観ていて飽きない。気づいたら、彼女に恋するイ・ジュノ(カン・テオ)と同様「猫に片想いする」かのように愛おしく見つめてしまう。また、時折自身の行動を分析して丁寧に解説する彼女の言葉はわかりやすく、多くの視聴者の自閉スペクトラム症の理解にも繋がっていると言える。
次に、法廷ドラマとしてもお仕事ドラマとしても恋愛ドラマとしても上質な作品であるということ。各話で描かれる事件は、時に韓国の社会全体を描き出すものであり、マイノリティの立場に属する人々に対する社会の差別意識の根強さと対峙するものであり、時に、親の愛と子の自立を巡る物語でもある。そしてそれらの事件を通してウ・ヨンウは、自分自身の問題と向き合ったり、大手弁護士事務所に所属する弁護士としての苦悩、つまりは依頼主の利益の優先か、社会正義の実現かのジレンマに苛まれたりもする。
最終話において、こんな台詞がある。
「私の人生はおかしくて風変わりだけど、価値があって、美しい」
本作の魅力はまさに、その「美しさ」にある。法律とクジラをこよなく愛するヒロインが見るファンタジックな世界は、彼女が生きている、決して美しいだけでない不寛容な世界(彼女がこれまで受けてきたいじめや就職差別、自閉スペクトラム症の男性の事件を扱った第3話を通して描かれた差別の歴史と、現在まで根強く残る人々の差別意識といった様々な事象から見て取れる)から彼女を守り、大きくて魅力に溢れた優しい世界に変えてくれる。それは、法廷劇の終盤、事件を解決に導く「彼女の閃きの瞬間」が、「想像の中のクジラが跳ねる姿を彼女が見つめる」光景を通して描かれることのみならず、満員電車に乗る彼女が、不安げに足を動かし、ヘッドホンをつける時、電車の外の世界ではクジラたちが寄り添って彼女に並走していることにおいても示される。
また、韓国の塾事情を描いた第9話における「子供解放軍総司令官」と子供たちとのやり取りや、第12話においてウ・ヨンウが出会う、正義を貫く女性弁護士の詩の朗読の最中など、人々があらゆる束縛から解き放たれた自由な瞬間に接するたび、彼女はそこに、悠然と泳ぐクジラの姿を見る。逆に、念願の済州島で、本物のイルカが跳ねた時に、ウ・ヨンウは悲しみの只中にいて、一切見ていないというのも興味深い描き方であった。常に想像上のクジラ・イルカと戯れているが、現実のクジラ・イルカとはなかなか出会えない彼女は、常に「目に見えるものだけが全てではなく、その先の本質を見ている」人物だ。