『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』で「Main Titles」が響く 血で血を洗う抗争劇

『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』王座の未来

 そんなレイニラにコアリーズの妻、レイニス・ヴェラリオン(イヴ・ベスト)が接近する。ヴィセーリスの従姉妹で、王位継承を最後まで争った彼女は女性であるばかりに玉座から遠ざけられ、“戴冠せざりし女王”の異名を持つ。ヴィセーリスが再婚すれば、民はやがて新たに生まれる男子こそが王位継承者であると認めるだろう。レイニラはそんな父権社会を変えてみせるとはねつけるが、レイニスは突きつける。「女が王座につくのを見るくらいなら、男たちは王土に火をつける」。

 レイニラの王位継承が公となった後、王弟デイモン(マット・スミス)も王都の守人を伴ってターガリエン家の居城ドラゴンストーンに立て籠もった。愛人ミサリア(ソノヤ・ミズノ)との間に生まれる子供の正統性を主張すべく、死産した王子ベイロンのために用意されていたドラゴンの卵を強奪する。事実上の反逆行為にヴィセーリスは“王の手”オットー・ハイタワー(リス・エヴァンス)に精鋭を与え、ドラゴンストーンへ送り出す。朝霧の中、ドラゴンストーンに続く道でデイモン、オットーの両勢が対峙するこの場面は本エピソードのハイライトだ。大スクリーンにも映える美しい撮影と、デイモンのドラゴン“カラクセス”まで登場する一触即発の緊張感、そして雲海から飛び出すレイニラのドラゴンライドに第2話にしてここまで見せるかと驚いた。『ゲーム・オブ・スローンズ』がシーズン終盤に向けてタメを作り続けてきたのとは対象的に、『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』は人気シリーズの続編だからこそ出し惜しみがない。独断でドラゴン“シアラックス”を駆り、流血沙汰に至ることなく事態を収めたレイニラには既に王者の気風があり、演じるミリー・オールコックにはエミリア・クラークとはまた異なる、まるでジブリヒロインのような凛々しさがある。

 しかし、レイニラが次期女王としての立場を主張できるのも“踏み台”があってこそである。父ヴィセーリスは妻と子を亡くした傷心に献身的に寄り添ってくれたアリセント・ハイタワー(エミリー・キャリー)を妻に迎える。レイニラにとって唯一の親友でもあるアリセントが男子を産めば、いずれレイニラの王位継承権を脅かすかも知れないのだ。レイニラに約束された玉座という未来はあまりにも脆く、危うい。

■配信情報
『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』
U-NEXTにて配信中
出演:パディ・コンシダイン、マット・スミス、オリヴィア・クック、エマ・ダーシー、スティーヴ・トゥーサント、イヴ・ベスト、ファビアン・フランケル、ソノヤ・ミズノ、リス・エヴァンス、ミリー・オールコック、ベサニー・アントニア、フィービー・キャンベル、エミリー・キャリー、ハリー・コレット、ライアン・コア、トム・グリン=カーニー、ジェファーソン・ホール、デヴィッド・ホロヴィッチ、ウィル・ジョンソン、ジョン・マクミラン、グレアム・マクタヴィッシュ、ユアン・ミッチェル、テオ・ネイト、マシュー・ニーダム、ビル・パターソン、フィア・サバン、ギャビン・スポークス、サバンナ・ステイン
日本語吹替版キャスト:早見沙織(レイニラ・ターガリエン役)、津田健次郎(デイモン・ターガリエン役)、堀内賢雄(ヴィセーリス・ターガリエン役)、大塚芳忠(オットー・ハイタワー役)、坂本真綾(アリセント・ハイタワー役)、大塚明夫(コアリーズ・ヴェラリオン役)、田中敦子(レイニス・ヴェラリオン役)、諏訪部順一(クリストン・コール役)
共同企画・製作総指揮:ジョージ・R・R・マーティン
共同企画・共同ショーランナー・製作総指揮・脚本:ライアン・コンダル
共同ショーランナー・製作総指揮・監督:ミゲル・サポチニク
製作総指揮・脚本:サラ・ヘス
製作総指揮:ジョスリン・ディアス、ヴィンス・ジェラルディス、ロン・シュミット
監督:クレア・キルナー、ジータ・V・パテル
監督・共同製作総指揮:グレッグ・ヤイタネス
原作:ジョージ・R・R・マーティン『炎と血』
原題:House of the Dragon
翻訳:川又勝利、佐々井朝衣
©2022 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and all related programs are the property of Home Box Office, Inc.
公式サイト:https://www.video.unext.jp/title_k/house_of_the_dragon

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