梶原善も『鎌倉殿の13人』の“定石”に飲み込まれるのか “人間”に戻った善児の見事な変化

『鎌倉殿の13人』“人間”に戻った善児

 これまで2度ほど鼎談形式で彼に取材させてもらったことがあるのだが、特徴的な役柄とは裏腹に、周囲の空気を柔らかに読み、とても頭の回転が速い人という印象。他の対象者の言葉を補足してくれたり、こちらから聞きづらいことを自ら話してくれたりと、非常にありがたく、そのお人柄に助けられたことを覚えている。

 じつは三谷主宰の「東京サンシャインボーイズ」は解散でなく、1994年から30年間の充電期間に入っており(2009年に新宿・THEATER/TOPSの閉館に伴い1度だけ公演再開)、その劇団活動再始動作品と三谷の口から予告されているのが『リア王』ならぬ『リア玉』で、主演は梶原善に内定(当時)。本当に2024年に梶原の『リア玉』が観られるかどうかは楽しみにしたいところだが、このエピソードからも三谷が俳優としての梶原を信頼しているのがよくわかる。だからこそ三谷は非常に難しい善児という人物を梶原に託したのだろう。おそらく本人の名から「善」の字を取って。

 伊東親子から梶原景時、そして今は義時に仕える善児だが、彼はかつて義時の兄・宗時(片岡愛之助)を暗殺し、持っていた巾着を盗んでいる。そして景時はすべてを悟った上で宗時の巾着袋とともに善児を義時に託した。さまざまな解釈があると思うが、わたしは善児が兄を手にかけたと承知した上で義時がこの暗殺者を自分の配下に置いていると考える。ある時期から義時は自身の感情より理で動く人になっているからだ。

 また、善児を語る上で忘れてはならないのが弟子・トウの存在。源範頼暗殺の際、目の前で両親を善児に殺された少女から師匠に対する恨みはすでに消えているのか。

 『鎌倉殿の13人』にささやかれる定石=意志とは違う局面で命を取られる者は最後に「善き人」になる。これが本当であれば、一幡の死に涙を見せた善児はそこに当てはまる。道具だった男が人の心を取り戻した今、彼の運命が鎌倉とどう交差するのか、その行く末を見届けたい。

■放送情報
『鎌倉殿の13人』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:小栗旬
脚本:三谷幸喜
制作統括:清水拓哉、尾崎裕和
演出:吉田照幸、末永創、保坂慶太、安藤大佑
プロデューサー:長谷知記、大越大士、吉岡和彦、川口俊介
写真提供=NHK

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる