『鎌倉殿の13人』“ラスボス”は三浦義村? 三谷幸喜に聞く、頼朝の死とここまでの手応え

三谷幸喜に聞く、『鎌倉殿』の手応え

 毎週日曜日、視聴者の心を楽しませ、そしてざわつかせ続けているNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』。5月から6月にかけては、ほぼ毎週と言っていいほど主要キャラクターの死が描かれていることも話題となっている。そして、第1回から物語を牽引し続けた源頼朝にも、ついにその日が訪れようとしている。「頼朝嫌い」がSNSでトレンド入りするなど、鮮烈な印象を与えた大泉洋が演じる頼朝。脚本の三谷幸喜は彼にどんな思いを込めていたのか。第25回の放送を前にじっくりと話を聞いた。(編集部)

「『鎌倉殿の13人』は小栗さんの新しい代表作になる」

三谷幸喜

ーー三谷さんは死が迫っている源頼朝をどのように描こうと思ったのでしょうか?

三谷幸喜(以下、三谷):頼朝の死については、諸説ありますが、僕としてはこれだけ長い間、脚本家として頼朝に寄り添ってきて、彼なりのつらさや孤独も十分感じてここまできているので、最期はちゃんと死なせてあげたかったんです。暗殺説もあるんですが、誰かに殺されるとすると、そこに殺す側のドラマが生まれてくる。そうではなく、あくまでも頼朝側のドラマとして完結させてあげたい、最期は静かに死なせてあげたいという思いがありました。一体、彼の人生とは何だったのか。彼ほど寂しい男はいなかったんじゃないか。彼の最期の1日を丁寧に描くことで、その答えが浮かび上がって来るように心がけたつもりです。僕の中で、この第25回には静かなイメージがあって、これまで積み重ねてきた24回に比べると厳かな1日というイメージで書きました。それを演出の吉田(照幸)さんもきちんと汲み取ってくださって、悲しいんだけど厳かに頼朝を看取る、そんな回になったかなと思います。大泉洋さんもそれを汲み取って一生懸命やってくれたし、巴(秋元才加)とのやり取りも「自然と涙が出てきた」と言っていたそうです。あんなに頼朝が泣くとは思わなかったんだけど、それはずっと頼朝を演じてきた積み重ねの上での涙なんじゃないかなと思っています。

ーー大泉洋さんが演じる頼朝像についてはどう受け止めていますか?

三谷:大泉洋という俳優が源頼朝を演じてくれたことで、結果的にこういう頼朝像が出来上がったのが全てだと思います。大泉洋という俳優の魅力、力量を僕はよく知っています。彼だったらこれができる、僕が望んでいる頼朝像をきちんとーーもしかしたらそれ以上に演じてくれるという信頼がありました。『鎌倉殿の13人』の放送が始まってからは会うことも、メールのやり取りもほとんどしていないですね。でも、完成した作品を観れば、僕がやりたいことを彼が分かってくれていることは十分わかりますし、この役を演じ切れるのは彼だけだと思いました。これだけ人間味のあるリアルな、そして孤独な部分も含めてきちんと頼朝を演じられる俳優は他にはいません。

ーー三谷さんにとっての源頼朝とはどういった人物なのでしょうか?

三谷:源頼朝という人をメインの登場人物として描けることは、脚本家冥利に尽きる嬉しさです。あれだけドラマチックな人生を送った人はそういないと思うし、なおかつ聖人君子でもなく、女好きということも含めて、様々な問題を抱えた歴史上の人物。僕じゃなくて誰が書いても魅力的になる気はするんですよね。それぐらいの人物として面白い人だなとは昔から思っていました。

ーー小栗旬さん演じる主人公・北条義時のここまでの変化や成長をどのように感じていますか?

三谷:僕はこれで大河ドラマの脚本を担当するのは3本目で、その毎回で思うんですけど、主人公とかその周辺の人たち、特に1年間ずっと登場していく義時や政子たちに関して言うと、実はあまり長期展望みたいなものは作らずに、その時その時に彼らが何を考えているのか、先読みはしないで、何か事件があったら彼らはどう対応していくのかを考えながら書いていくんですね。時々出てくる人たちはまた話は別で、例えば義経(菅田将暉)だったら登場から去っていくまで全部プランを立てて書きますけど、もっと長い期間で出てくる人たちに関してはあまりプランを立てずに書くんです。そうじゃないと結論から、彼らの人生を逆算して描いていくことになってしまう。義時に関しても、最初から決してダークサイドに落とそうと思って書いているわけではないんです。義時と同じ人生を僕も辿っていく中で、次第にどうしてもそちらの方向にいってしまう。そんなイメージですね。今の第25回で義時がホワイトとブラックのどの辺にいるのかは僕にも分からないですし、この後どうなっていくのかも分からない。それはこの後、義時と書いてる僕と演じている小栗さんとで一緒に見つけていく、そんな感じです。

ーー義時を演じる小栗さんの芝居についてはいかがでしょうか?

三谷:僕は小栗旬という俳優の持っているパワーを以前から感じていました。何年か前に僕の映画に出てくださった時も、短い撮影期間でしたが、やってほしいことを的確に演じてくださいました。相性というのか、小栗さんとは僕と共通言語を持ってる人だなというのをその時に感じましたね。勝手な思いですけど、『鎌倉殿の13人』は小栗さんの新しい代表作になるなという気がしています。前半も素晴らしかったですが、後半の年齢を重ねてからの義時も、前半にも増して小栗さんの素晴らしさが出てくるような気がしています。いや、確信しています。



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