『NICE FLIGHT!』ようやく気持ちが通じ合った粋と真夢 “悲しい”から“幸せ”な展望デッキへ
「花火を一緒に見たい人とか、いないんですか?」と聞かれ、真っ先に粋(玉森裕太)の顔を思い浮かべた真夢(中村アン)。視聴者からすれば、彼女の“好き”はダダ漏れなのに、粋だけにはうまく伝わらない。手を繋いでいたところを、夏目(阿部亮平)に目撃されて、パッと離れたのも、恥ずかしさからくるもの。決して、粋を拒否したわけではないのに……。言葉が足りない真夢と、ちょっぴり鈍感な粋。叶うことならば、伝書鳩のように2人の仲を取り持ってあげたい。このままでは、いつまでも平行線のままのような気が。さらに、『NICE FLIGHT!』(テレビ朝日系)第5話では、2人の仲を引き裂きかねないトラブルが発生してしまう。
真夢が、人を受け入れることを躊躇してしまう原因は、幼少期にあった。若く未婚だった母によって、青森の祖父のもとに預けられた真夢。いつかは、母が迎えに来てくれるはず。幼い彼女は、そんな“希望”を抱いて空を見上げていた。
ようやく、「一緒に暮らそう」と連絡が来たのは、高校2年生の夏。真夢は、母と暮らせると信じて、ひとりで羽田空港に向かった。しかし、いくら待っても、待ち合わせの“展望デッキ”に母は来ない。新しい家庭を築き、幸せな道を歩こうと必死で頑張っている母は、真夢を受け入れる覚悟ができなかったのだろう。「なら、なんで呼んだんだ?」と言いたくもなるが、母にも何か理由があったのかもしれない。再婚相手に何かを言われたのか。はたまた、“今”の自分を守るので精一杯だったのか。
しかし、どんな理由があったにせよ、母親に受け入れられなかった事実は、真夢の心に大きな傷を落としてしまった。どうせ、受け入れてもらえないのなら、最初からなにも求めなければいい。どうせ、期待をしたって裏切られるだけだから。どうせ、どうせ……と傷つかないための予防線を張っているうちに、自分までがんじがらめになってしまったのだろう。粋の存在は、その沼から抜け出すための“光”のように見えたのかもしれない。
大好きな粋が、花火フライトに誘ってくれた。真夢にとって、こんなに嬉しいことはないはずだ。しかし、待ち合わせ場所を“展望デッキ”に指定されると、表情が曇ってしまう。信じてきた母に裏切られ、ひとりで悲しみを飲み込んだ展望デッキ。もしも、粋にまた裏切られてしまったらーー。真夢は、そんな不安を抱えながらも、彼を信じる自分を選んだ。過去にとらわれてきた自分と決別して、新しい自分に生まれ変わるために。粋にとっては、ただの待ち合わせかもしれないが、彼女にとってはとても深い意味のあるものだったように思う。
「ダイバートの影響で、今夜の花火に行けなくなりました。ごめんなさい」
展望台で粋からのメールを見た真夢は、どんなことを想ったのだろう。雷雲のせいで、予定地に着陸できなかったのだから仕方ない。それに、“ツイてる”粋のフライトがトラブルに見舞われないわけがないし。母とはちがい、粋はどうしても来ることができなかった。あの時とは、まったくちがう。そんなふうに、一生懸命に自分を納得させていただろうか。でも悔しいが、“来なかった”事実は同じだ。正直、筆者はこの時点で、真夢はふたたび心のドアを閉ざしてしまうと思っていた。