『ブライアン・ウィルソン』監督が語るビーチ・ボーイズの魅力 独自の撮影方法に至るまで
「サーフィン・U.S.A.」「グッド・バイブレーション」「神のみぞ知る」、そして『ペット・サウンズ』『スマイル』などで知られるビーチ・ボーイズ。その創設メンバーであるブライアン・ウィルソンに密着したドキュメンタリー『ブライアン・ウィルソン/約束の旅路』が公開された。
本作を手がけたブレント・ウィルソン監督は、ブライアンに旧友のジェイソン・ファインとドライブをしながら収録するスタイルを提案。インタビュー嫌いで知られるブライアンから、さまざまなエピソードを引き出すことに成功した。
今回リアルサウンド映画部では、ウィルソン監督にインタビュー。本作が公開されるまでの道のりや、ブライアンの知られざる一面について聞いた。(編集部)
「ブライアン・ウィルソンといる」ということ自体が冒険
――まず本作の企画を思いついたのは、いつ頃だったのでしょうか?
ブレント・ウィルソン(以下、ウィルソン):話は5年以上前に遡るのですが、ドキュメンタリー映画『ストリートライト・ハーモニーズ』(2017年)を私が撮った時に、ブライアンが出演してくれたのがきっかけです。50年代のドゥーワップ(コーラスの一種)についての映画だったのですが、その音楽スタイルにブライアンがとても影響を受けていて、快くオファーを受けてくれたんです。その撮影の際に、ブライアンの人生についてまだ語られるべきことがあるんじゃないかとに感じました。私に言わせれば、彼の人生は第3幕なわけです。そのアイデアをブライアンと彼のチームに伝えたところ、気に入って撮影に賛同してくれました。
――その時から、本作をロードムービーのような形にしようという構想はあったのですか?
ウィルソン:いえ、初めは私自身がブライアンにインタビューしようとしたんですが……最悪でした(笑)。映画の冒頭にも少し出てくるのですが、無言のまま居心地の悪い時間だけが流れていって、私では無理だと分かったんです。インタビューだけでなく、映画の撮影自体も諦めかける程でした。そんな時、ブライアンのマネージャーの勧めで、『ローリング・ストーン』のジェイソン・ファインが手掛けた「ブライアンのちょっとマシな日々」という記事に出会ったんです。それは、ブライアンと一緒にロサンゼルス中を車でドライブするという企画で、素晴らしい記事でした。そこで私は、ジェイソンに「一緒にドライブをしながら、ブライアンにインタビューするのはどうだろう?」と尋ねました。ジェイソンも「私自身はカメラに映ったことはないんだよ。でも楽しそうだね」と承諾してくれました。そこでいわゆる普通のドキュメンタリーから、ロードトリップのような映画に方針を転換したのです。
――想像もしていなかった始まりだったのですね。実際に撮影を進めていく中で困難に直面した場面はありましたか?
ウィルソン:毎日がサプライズだらけでした。「ブライアン・ウィルソンといる」ということ自体が冒険なのです。彼は5分もすれば気が変わってしまいます。そうすると計画していたことが全てなくなってしまうわけです。ある意味でそれは楽しいことでもありました。クルーも私も、彼がどれだけ予想外の行動を取るかということに対して、笑うしかなくなっていました。私たちはできるだけそのプロセスを楽しむということに方向転換するしかなかったんです。ブライアンは本当によく気が変わる人です、いい意味でね(笑)。