ジョーダン・ピール新作『NOPE/ノープ』北米No.1 オリジナル脚本作で3年ぶりの快挙に
『ゲット・アウト』(2017年)、『アス』(2019年)のジョーダン・ピール監督が新たな挑戦とともに帰ってきた。最新作『NOPE/ノープ』が、7月22日~24日の北米週末興行ランキングの首位を獲得。オープニング興行収入(3日間)は4400万ドルで、オリジナル脚本作品としては、クエンティン・タランティーノ監督『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019年)の4108万ドル以来およそ3年ぶりの好成績。言わずもがな、コロナ禍では最高の数字を叩き出したことになる。
ジョーダン・ピール作品の特徴といえば、ホラー/スリラージャンルに人種や社会の問題を描き込み、同時にコメディアンとしてのルーツを活かしたユーモアを織り込む作風だ。『NOPE/ノープ』はロサンゼルス郊外の牧場に暮らす兄妹が、空に現れる“何か”を撮影しようと試みる物語で、『ゲット・アウト』ぶりのピール作品となるダニエル・カルーヤ、『ハスラーズ』(2019年)のキキ・パーマー、『ミナリ』(2020年)のスティーヴン・ユァンらが出演した。
予告編を観てもわかるように、本作はピールにとって新境地開拓となる一作だ。ストイックなホラー/スリラーだった『ゲット・アウト』『アス』に比べると、『NOPE/ノープ』はスケールが大きく、本国では「SFホラー」と形容されている。コロナ禍で映画業界が動きを止め、映画館も休業に追い込まれる中で本作の脚本を執筆したピールは、「観客が映画館に戻りたくなるようなスペクタクルを作りたかった」という。製作費も6800万ドルと、『ゲット・アウト』の450万ドル、『アス』の2000万ドルから大幅に増加した。
この点で言えば、『NOPE/ノープ』の興行は今後が重要となる。もちろん本作は好調な滑り出しを見せており、初動成績は『エルヴィス』の3121万ドルを超えて今夏の大人向け映画としても指折りの成績だが、あらかじめ業界内では「3日間で5000万ドルを突破する」と予想されていたからだ。ピールの前作『アス』は3日間で7111万ドルというスタートダッシュを決めており、今回はそれに届かなかったという現実もある。
世界累計興収でいえば、『ゲット・アウト』は2億5540万ドル、『アス』は2億5518万ドル。『NOPE/ノープ』の海外公開が本格化するのは8月中旬とあって、口コミ効果がどこまで広がるかがポイントだ。Rotten Tomatoesでは批評家スコアが83%、観客スコアが71%。批評家の評価は前2作に及ばないが、観客の評価は『アス』を上回った。出口調査に基づくCinemaScoreも「B」評価で『アス』と並び、賛否の分かれやすいホラー作品としては堅実な支持を得ている。
また、『NOPE/ノープ』で特筆しておきたいのは観客の多様性だ。R指定ということもあって年齢層は18~34歳が全体の約7割を占めたが、男女比は男性が55%、女性が45%とほぼ半々。民族的には白人が35%、黒人が33%、ラティーノが20%、アジア系が8%となっている。ユニバーサル・ピクチャーズの国内配給を統括するジム・オール氏は、あらゆる層にアプローチできている現状を「興行的に良い兆候」と述べた。
ちなみに本作は、ピールが『TENET テネット』(2020年)や『ダンケルク』(2017年)などの撮影監督ホイテ・ヴァン・ホイテマと初のタッグを組み、IMAXカメラを導入した一作。IMAX上映やラージフォーマット上映が興行収入の34%以上を占めているという。日本公開は8月26日、作品の真価を劇場で確かめたい。