林遣都、仲野太賀らが生む化学反応 坂元裕二脚本『初恋の悪魔』期待通りのおもしろさ

坂元裕二『初恋の悪魔』期待通りのおもしろさ

 坂元裕二脚本の新しいドラマというだけで、今期のドラマのなかでも一際注目すべき作品であることがわかる。7月16日にスタートした日本テレビ系列土曜ドラマ『初恋の悪魔』。タイトルが示す意味はまだわからないとはいえ、メインキャスト4人の軽妙な掛け合いと、台詞で魅せる坂元脚本がよく活きそうなシチュエーション。これは期待通りのおもしろい作品になりそうだ。

 境川警察署の総務課で働く馬淵悠日(仲野太賀)は、署長の雪松鳴人(伊藤英明)から刑事課の刑事・鹿浜鈴之介(林遣都)の監視を命じられる。ある失態から停職処分中の鹿浜は、殉職した馬淵の兄の死に関与している可能性があるというのだ。いざ鹿浜への接触を試みる馬淵だったが、豪邸に一人で暮らす鹿浜は凶悪犯罪愛好家でなかなかの変人ぶり。そんな折、病院で起きた少年の転落死事件を捜査していた新人刑事の服部渚(佐久間由衣)に心惹かれた会計課の小鳥琉夏(柄本佑)は、友人の馬淵にその事件を解決して渚に手柄を立てさせることを提案する。そして生活安全課の刑事・摘木星砂(松岡茉優)と鹿浜の4人で、事件の推理を重ねていくのである。

初恋の悪魔

 捜査権のない4人が難事件を解決する。いわゆるミステリードラマの体裁をとりながらも、刑事ドラマとも探偵ドラマとも違う。捜査資料の保管庫に忍び込んで資料の写真を撮り、事件現場に出向いても聞き込みをするわけでもない。鹿浜の家の一室で“自宅捜査会議”と称して互いの推理をすり合わせ、真相を導きあっていく。その様子は、さながらミステリードラマをテレビの前で推理している視聴者に近い。彼らの頭の中で進められる仮説がドラマとして可視化され、答えを渚にこっそり提供した後の事件解決のプロセスは徹底的に省かれる。そのことからも、このドラマが重きを置くのは“推理する”というただ一点であることがよくわかる。

 隣人をシリアルキラーだと信じて疑わず、摘木に対して抱くドキドキ感を殺意であるととらえ、自分のなかにシリアルキラーとしての一面が潜んでいるのではないかと考えるようになる鹿浜。細かすぎて周りからは敬遠されている小鳥に、そんないかにも面倒そうな二人の間に立つ馬淵は兄の死の真相について知ろうとする。また、第1話のラストでは何やら深い病みを抱えていそうな摘木の様子が描かれるわけだが、驚くほどに掴みどころのないというか、それらの要素がどのようにドラマを転がしていくのか見えないあたり、いかにも坂元裕二らしい周到さだ。

 当然坂元作品である以上、注目を置くべきは魅力的な言い回しであろう。序盤の馬淵の「負けてる人生って、誰かを勝たせてあげてる人生です。いい人生じゃないですか」という台詞であったり、小鳥に侮辱されたと立腹する鹿浜が「ごめん」の一言に、すぐさま「いいよ」と返す一連の流れ。もっぱらこのメインキャスト4人の掛け合いが生み出す化学反応にこのドラマのすべてがかかっていると言ってもいいだろう。林遣都に仲野太賀、松岡茉優に柄本佑。この4人の名前を見る限り、一ミリも心配する要素はない。これは安心してドラマの世界、坂元裕二の世界に身を委ねることができる。

■放送情報
『初恋の悪魔』
日本テレビ系にて、毎週土曜22:00~22:54放送
出演:林遣都、仲野太賀、松岡茉優、柄本佑、伊藤英明、安田顕。田中裕子、佐久間由衣、味方良介、瀬戸カトリーヌ、萩原みのり、西山潤、毎熊克哉
脚本:坂元裕二
演出:水田伸生、鈴木勇馬、塚本連平
プロデュース:次屋尚、池田禎子(ザ・ワークス)
チーフプロデューサー:三上絵里子
製作協力:ザ・ワークス
製作・著作:(c)日本テレビ
公式Twitter:@hatsukoinoakuma
公式Instagram:hatsukoinoakuma_ntv

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