『からかい上手の高木さん』『ゆるキャン△』 劇場版の共通点は“次のステージ”への変化
子ども時代・学生時代からの変化という意味では『映画 ゆるキャン△』もまた、特筆すべきものがあった。こちらも漫画原作であり、テレビアニメは2期、またテレビ東京系列でテレビドラマが2期放送されている。近年盛り上がりを見せるソロキャンプブームを牽引した作品としても注目を浴びた。公開館数は121館と決して大規模ではないが、公開3日間で累計興行収入3.5億円の大ヒットを記録するなど、ファンの熱意が伝わる。
原作・テレビアニメともに、学生時代のゆる〜いキャンプを楽しむ様子を描いていた作品だった。しかし、この劇場版では高校生だった主人公、志摩リンなどの登場人物たちが、成長して大人になり、社会人となった後に、仲間たちを巻き込みながら、キャンプ場を作る物語となっている。
元々ゆるいキャンプ生活を描いていたこともあり、社会人になったからといって、恋愛や家族の事情、ブラック労働などのリアルな大人の問題は扱われない。主題となるのはあくまでもキャンプ場作りであり、メンバーたちが楽しみながら、色々と知恵を絞って作り上げていくさまを観客も一緒になって楽しむ作品だ。
同時に、その熱意や好きという思いだけではどうしようもない事態に直面することも描かれている。キャンプ場を開発している最中に遺跡が発掘されて作業がストップしてしまい、再開時期も未定になるという展開がある。ほかにも、勤めている小学校の閉校、勤めている会社の先輩への思いなど、大人だからこそ受け止めなければいけない、学生時代からの変化が示されている。
学生時代はただ単に好きであるだけでよかった。しかし、キャンプ場を作り上げて好きを広げようとすると、同じままではいられない。施設の維持管理、ごみ処理の問題、あるいは看板の設置なども含めて、複数の事柄を解決していく必要がある。それはまさに、責任を持つ、ということなのだろう。基本ラインとしてはゆるく日常生活の楽しさを強調しながらも、社会人となること、大人になることの変化を見事に描いていた。
学生時代の思い出は一生ものだろう。しかし、誰もがいつまでもそこに浸れるわけではない。その変化の予感と、変化した先にも変わらずにある、絆や友情などといった感情。『劇場版 からかい上手の高木さん』と『映画 ゆるキャン△』は、それらを克明に記した作品となっている。ファン向けの要素が強い部分もあるものの、間口は広いと感じた。ぜひ劇場でこの変化の予感を体感してほしい。
■放送情報
劇場版『からかい上手の高木さん』
全国公開中
声の出演:高橋李依、梶裕貴、小原好美、M・A・O、小倉唯、落合福嗣、岡本信彦、内山昂輝、悠木碧、内田雄馬、小岩井ことり、田所陽向、水瀬いのり、戸松遥ほか
原作:山本崇一朗
監督:赤城博昭
構成:福田裕子
脚本:福田裕子、伊丹あき、加藤還一
キャラクターデザイン:高野綾
音楽:堤博明
アニメーション制作:シンエイ動画
製作:劇場版からかい上手の高木さん製作委員会
配給:東宝映像事業部
(c)2022 山本崇一朗・小学館/劇場版からかい上手の高木さん製作委員会
公式サイト: http://takagi3.me
公式Twitter:@takagi3_anime
映画『ゆるキャン△』
全国公開中
キャスト:花守ゆみり、東山奈央、原紗友里、豊崎愛生、高橋李依
原作:あfろ(芳文社『COMIC FUZ』掲載)
監督:京極義昭
脚本:田中仁、伊藤睦美
キャラクターデザイン:佐々木睦美
オープニングテーマ:亜咲花「Sun Is Coming Up」
エンディングテーマ:佐々木恵梨「ミモザ」
アニメーション制作:C-Station
配給:松竹
(c)あfろ・芳文社/野外活動委員会
公式サイト:https://yurucamp.jp/
公式Twitter:@yurucamp_anime