劇場版『からかい上手の高木さん』は“西片”にキュン 魅惑的な高木さんと淡い夏の演出に注目
純朴で心優しい中学生男子の西片(CV:梶裕貴)を、ドキッとするような一言や振る舞いでからかう同級生の女子、高木さん(CV:高橋李依)。視聴者は、中学生男子特有のうぶさでドギマギする西片にもどかしさを覚えつつ、高木さんが時折見せる本気とも嘘とも知れないからかいに思わずキュンとさせられ、気づけば2人の初恋を応援してしまっている。
『からかい上手の高木さん』は漫画家・山本崇一朗の人気作品をアニメ化したもので、原作は昨年「第66回小学館漫画賞」で少年向け部門を受賞、コミックスはシリーズ累計1100万部を突破する人気作。同級生のユカリにスポットを当てた『恋に恋するユカリちゃん』や、高木さんと西片の大人になった姿を描いた『からかい上手の(元)高木さん』などのスピンオフ作品も共に人気を集めている。
アニメは、2018年に第1期が放送、翌年に第2期が放送され、からかいを通して互いに惹かれ合い距離を縮めてきた2人。今年1月から放送された第3期では、高木さんのからかいがより積極的になり、西片も自分の気持ちに気づき高木さんの思いに応えるも、はっきりとした告白には届かないまま放送が終了。公開中の劇場版『からかい上手の高木さん』は、テレビシリーズ第3期を経た西片や高木さんたちが、中学最後の夏休みをどのように過ごすかが描かれ、キュンを越えた感動作となっている。
高木さんたち中学3年生にとって夏は、自分たちの進路を決める大事な時期。島に残るのか島外の高校に行くのか。小学生からの友達と離れてしまう寂しさ、大人への一歩を踏み出すことへの恐れや不安、そうした悩みや葛藤も抱えながら、日々を大切に過ごそうと努力する姿も描かれる。
第3期の最後では、その日のうちに直接ホワイトデーの贈り物を渡したいという西片が、泥だらけになりながら高木さんを探して島中を駆け回り、不器用ながら思いを高木さんに伝えた。あとは西片からの明確な告白を待つばかり……。
劇場版での高木さんは、大胆なからかいで西片にアプローチ。たとえばグリコの罰ゲームにキスを指定したり、プールでの息止め対決では水中で「好き」という口の動きで西片をドキドキさせるなど。テレビシリーズとは異なる少し大人びた表情や仕草に、キュンを越えてドキッとさせられる。かと思えば、西片から蛍を一緒に観に行かないかと誘われ、食い気味に返事をする時は、電話口から聞こえてくる、うれしくて思わずはしゃいでしまっているような声が実にピュア。そんなキュンとドキッの応酬に高木さんの可愛らしさと成長がにじみ出ている。西片と高木さんが1匹の白猫の里親を探しながら世話をするエピソードでは切ないその最後に、いつもはどこか大人びた高木さんがこの時ばかりは子供のように泣きじゃくり、その姿にギュッと胸を掴まれる。そこで高木さんにかける西片の言葉が実に西片らしく、しかし男気も感じさせ、この夏が西片を大きく成長させたことが分かる。
キラキラとした海や緑の山など、舞台である小豆島の風景が美しく描かれていることも劇場版の魅力。2人が白猫のハナ(CV:水瀬いのり)のお世話をする神社など、物語に登場する場所は実際にあるそうで、聖地巡礼に訪れるファンも多いことだろう。ちなみに第3期のオープニング映像にも登場していた、小豆島の看板猫として有名なエンジェルロードの“たえちゃん”(昨年旅だってしまったそう)は、劇場版にも登場する。エンドロールにも、たえちゃんの名前があり、劇場版で猫を題材にしたエピソードを描いたのは、制作陣の粋な計らいだったのかもしれない。