阪本順治監督が指摘する伊藤健太郎の魅力 “親子”のような2人が『冬薔薇』を語る
伊藤健太郎は“映画的”な俳優
――スクリーンで久しぶりに伊藤さんを観て、映画が似合う役者だなと改めて感じました。
伊藤:本当ですか? 嬉しいです(笑)。
阪本:テレビと比較すると、映画は「引き」でも大丈夫とか言われますけど、だからこそクローズアップは大事なんです。カメラが近づいているときに俳優が魅せるものが、大きなスクリーンに耐えられるのかどうか。その点、健太郎のクローズアップは非常に映画的であったし、映画の大きなスクリーンに耐えられる人だなと思いました。
伊藤:すごく嬉しいです。僕は映画が大好きだし、何度も映画に救われた経験があります。だからこそ自分がこのお仕事をさせていただけてることに対して誇りもあります。そんなふうに言っていただけるのはすごく嬉しいし、これからも頑張ろうと思います。
阪本:まぁ腹が立つのがな、クローズアップ撮るとさ、明らかにお肌がつやつやしてんの。若さだよな。
――蓮司さんとは違うと……。
伊藤:それ、すごい悪いこと言っていますよ(笑)。
阪本:(笑)。蓮司さんも薫さんも、違う威力があるから。
伊藤:本当にすごい説得力ですよね。
阪本:本人たちは無意識だろうけど、シワの一つ一つに人生が煮詰まっているんだよね。俳優として、自分じゃない誰かを連綿と演じてきたわけでしょ。だから自分の実人生と、架空のキャラクターの実人生も全部含まれているわけですよ。
伊藤:確かに。
阪本:健太郎もそうだけど、自分じゃない誰かを演じて、そこにある種の苦渋と喜びを感じる職業だから、一般の人には絶対経験できない時間を歩んでいるわけです。自分じゃない、誰かのことを永遠に考え続ける職業。僕は僕で、自分じゃない誰かを演出するわけで。いろんなキャラクターの経験が積み重なって、自分の中で大きな財産になっている。俳優、監督というのは素敵な仕事だなと改めて思います。
――本作はシリアスな人間ドラマでしたが、また阪本監督が手掛ける喜劇も観たいです。
伊藤:今回の映画で言えばずっとトイレから出ないとか……(笑)。
阪本:トイレの映画もいいね(笑)。喜劇は喜劇で人の“業”をユーモアで表すもの。ある種、深刻なテーマは喜劇的に軽妙にした方が伝わることもあるからね。喜劇は好きだし、機会があればまた撮りたいと思っています。
――伊藤さんがまた阪本監督作品に出演できるとしたらどんな役を演じてみたいですか?
伊藤:僕はボクシングがやりたいんですよ。格闘技好きっていうのもあるんですけど、ボクシング映画、阪本さんといつか一緒にやれたら最高だなって。
阪本:半端じゃないことだけは覚悟してくださいよ。29本撮って、そのうち4本がボクシングものなんだから。
伊藤:そうですよね(笑)。『冬薔薇』以上に追い込まれる作品になると思いますが、だからこそまた成長できるのかなって。阪本組の空気感の中で芝居ができることはすごく幸せなので、是非またご一緒したいです。
■公開情報
『冬薔薇(ふゆそうび)』
公開中
脚本・監督:阪本順治
出演:伊藤健太郎、小林薫、余貴美子、眞木蔵人、永山絢斗、毎熊克哉、坂東龍汰、河合優実、佐久本宝、和田光沙、笠松伴助、伊武雅刀、石橋蓮司
製作:木下グループ
配給:キノフィルムズ
(c)2022 「冬薔薇」 FILM PARTNERS
2022年/日本/カラー/スコープサイズ/5.1ch/109分/PG12
公式サイト:https://www.fuyusoubi.jp/
公式Twitter:https://twitter.com/FUYUSOUBI_jp