トム・クルーズが導く新たな映画体験 『トップガン』の限界に挑んだ『マーヴェリック』

トム・クルーズが導く新たな映画体験

 1986年に公開されたスカイアクション映画『トップガン』から36年という長い年月を経て、ついにリリースされた続編『トップガン マーヴェリック』。ファンが待ち続けた続編は前作からどのように進化したのだろうか。

 当時、新進俳優だったトム・クルーズを主役に迎えた第1作は、ケニー・ロギンスの主題歌「デンジャー・ゾーン」をはじめとする軽快なロックナンバーに乗せて激しいスカイアクションが繰り広げられ、まさにMTV時代を象徴するかのような「カッコいい映画を作るために生み出された映画」だった。

 そういった点をつつかれ、批評家からは少なからずネガティブなレビューはあったものの、世界的な大ヒットとなり、社会現象を巻き起こすと、クルーズはスターの座を不動のものに。

 通常、ハリウッドでは大ヒットした映画はすぐに続編が製作される傾向にあるが、『トップガン』は例外だった。何度か続編の企画が浮上していながら実現しなかった理由は、クルーズが納得できる脚本と、CGIを使わずに戦闘機の飛行シーンを撮影することにこだわったからだという。2015年にExtraのインタビューで続編の可能性について質問されたクルーズが、「ジェット機のシーンではCGIを使いたくありません。すべてを可能にする方法を考えることができて、国防省が許可してくれたら最高でしょうね」と回答(※1)。映画で特殊効果やCGIが大量に投入されるのが当たり前となっている現代のハリウッドにおいて、あくまで「実際に戦闘機を飛ばして撮影したい」との意欲と試みに固執したことで、続編の誕生に長い年月がかかったようだ。

 こうして、“特定の条件”下でクルーズが望んだ続編では、実際に戦闘機F-18を飛ばした空中戦(ドッグファイト)や飛行訓練のシーンが実現。さらに、パイロットを演じる主要キャストが3カ月にわたる過酷な特殊訓練を積み、コクピットに入った俳優が自分でカメラを操作しながら撮影し、強烈な重力加速度「G」を実際に体感しつつ演技をするという、前代未聞のシーンまで可能(※2)となったのだ。

Top Gun: Maverick | Most Intense Film Training Ever (2022 Movie) - Tom Cruise

 まさに『マーヴェリック』では、CGIを使わないドッグファイトや飛行シーンが何といっても最大の見どころであり、前作から大きく進化したポイントであることは言うまでもない。映画館で観賞した筆者は、あまりにもリアルで緊迫感あふれるスリリングな映像に身がすくんでしまったほどだ。文字通り“手に汗握る”大迫力の飛行シーンは、映画史に新たなページを刻んだと言っても過言ではないだろう。

 そして、マーヴェリックが教官としてパイロット養成学校“トップガン”へ戻り、親友だったグース(アンソニー・エドワーズ)の息子ルースター(マイルズ・テラー)をはじめとする訓練生を導いていく続編では、前作で希薄だった主人公の心の葛藤やキャラクターの関係性が改善され、深く掘り下げられている。ネタバレは避けるが、ストーリー展開にも非常に説得力があり、その厚みも倍増。この脚本に納得したクルーズが、続編にゴーサインを出したのも頷ける内容となっている。

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