石橋静河、強さも弱さも表現する巧みなアプローチ 『鎌倉殿の13人』静御前は運命の役に

石橋静河、静御前は運命の役に

 NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で源義経(菅田将暉)の愛妾・静御前を石橋静河が演じている。初の大河ドラマ出演で、自分と同じ名前の女性を演じることに、特別な思い入れもあるようだ。3月の新キャスト発表の際には「彼女の内面の美しさをしっかり表現したいと、自分の中から力が湧いてくる感じがしました」とコメントしている。

 静御前といえば、都随一の白拍子で、義経を虜にするほどの妖艶さで美しい舞を披露。石橋自身も、4歳からクラシックバレエを始め、アメリカ・カナダでのバレエ留学を経て、ダンサーとして活動もしている。共通点がいくつもあるとはいえ、800年以上前の乱世に生きた女性を演じきるというのは、所作なども含めて容易いことではないはず。

 第18回「壇ノ浦で舞った男」では、平家を滅ぼした後の義経が、北条義時(小栗旬)と源頼朝(大泉洋)との関係について愚痴をこぼしているときに、無邪気に釣りをする静御前が登場。その姿は、「ピュアそのもの」という感じでまるで天然水のCMのようだった。

 白拍子姿の艶やかな雰囲気と、素朴な表情。義経でなくても魅了されるのは仕方ないことだが、戦場で神がかった強さを発揮する天才武将から一変、義経の人としてダメな部分が場面によって透けて滲むのも面白い。義時に「それはそれ、あれはあれ」と義経が言い放つ木の影から「それ」と表現された正妻の里(三浦透子)が「あれ」の側の、静御前と義経が川で遊んでいるのを眺めているのもシュールで妙に心がざわついてしまった。義経をめぐる正妻と愛妾の戦いは、今まさに始まったばかり。静御前と里の女同士のコミカルなバトルを思う存分見られたらいいのだけれど、物語は待ったなしの展開で進んでいく。

 5月15日放送の第19回「兄弟の亀裂」では、頼朝と義経の関係が悪化していくなかで、静御前にも影響が及んでくる。現代を生きる女性のしなやかさ、強さと同時に脆さや弱さを演じる役によって絶妙なさじ加減で表現してきた石橋だが、800年以上前の、歴史上の人物となるとアプローチもまた違ってくるだろう。

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