『カムカムエヴリバディ』がくれた“日々鍛錬する”私たちへのプレゼント 総集編本日放送
そして、最後に描かれた、最も重要なこと。それは、「三世代の女性たちが紡いでいく、100年のファミリーストーリー」の宿命とも言える、「次の世代に継承し繋げていかなければならない」というある種の「呪い」から、物語を解放して見せたことである。
最終回では驚くべき「継承のシャッフル」が描かれる。定一(世良公則)の代から続く喫茶店「Dippermouth Blues」をるいと錠一郎が引き継ぎ、るいの「回転焼き屋」は桃太郎(青木柚)と結婚した、豆腐屋のきぬ(小野花梨)の孫・花菜(二役)が引き継ぎ、勇(村上虹郎/目黒祐樹)の野球愛を桃太郎が引き継ぎ、「たちばな」のおはぎをかつて金太(甲本雅裕)に救われた闇市の少年が引き継いだ。
『オードリー』のヒロインと同じく「結婚・出産をしないまま最終回を迎えた」ヒロイン・ひなたは、ラジオの英語講座で身に着けた英語で、稔の願った「どこの国とも自由に行き来できる」そんな世界を闊歩し、アニーこと安子(森山良子)の後継とも言える仕事をすると共に、かつて幽霊と会話したこともある平川唯一(さだまさし)による「カムカム英語」の流れをくむ「ラジオ英語講座」のテキストを作り、それが、視聴者がこれまで見てきた「100年の物語」だったことが最後にわかる。それぞれの好きなものに夢中になって生きていいのだ。気の赴くままに。日々の鍛錬を怠らず、ひたむきに生きてさえいれば、きっと誰かがその思いを繋いでくれる。そんなことをこのドラマは教えてくれた。
コロナ禍は未だ続き、自由に世界どころか国内でさえ闊歩できない今日この頃、「日々鍛錬」をいくら続けても、別段代わり映えのない毎日に「意味があるのかな」と思う日もある。でもきっといつか、「人生が輝く」日を夢見て、「ひなたの道」を歩いていこう。私たちは「全国のカムカムの赤ちゃん」なのだから。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』総集編
NHK総合にて、5月4日(水・祝)14:00〜16:59放送
出演:上白石萌音、深津絵里、川栄李奈ほか
脚本:藤本有紀
制作統括:堀之内礼二郎、櫻井賢
音楽:金子隆博
主題歌:AI「アルデバラン」
プロデューサー:葛西勇也・橋本果奈
演出:安達もじり、橋爪紳一朗、松岡一史、深川貴志、松岡一史、二見大輔、泉並敬眞ほか
写真提供=NHK