『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』、「シリーズ作品受難の時期」を吹き飛ばす好スタート

『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』好発進

国内映画興行ランキング

 先週末の動員ランキングは、『名探偵コナン』劇場版の25作目となる『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』が土日2日間で動員96万6000人、興収13億8400万円をあげて初登場1位となった。オープニング3日間累計の動員は132万1944人、興収は19億746万7150円。この数字は、昨年同時期に公開されたシリーズ24作目の『名探偵コナン 緋色の弾丸』の約86%の成績。直近の他作品の興行から判断する限り、コロナ・ファクターは(ひとまず)ほぼ考慮しないでいい段階。そのわりにはスタートダッシュの勢いが少々弱かったが、ウィークデイに入ってからは順調な推移を見せている。まずは、公開直後に3回目の緊急事態宣言に入ってしまった前作『名探偵コナン 緋色の弾丸』の最終興収76.5億円超えが最初の目標となるだろう。

 気がかりなのは、2020年3月に始まるコロナ・パンデミックの前後で、国内アニメーション映画の各フランチャイズ作品がそれまでの記録を上回った例がまだ一つもないことだ(前作から9年開いた上に最終作となった『シン・エヴァンゲリオン劇場版』を除く)。例えば映画『ドラえもん』シリーズは2018年、2019年と連続して興収50億の大台を超えていたにもかかわらず、今年3月に公開された最新作の『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』はその半分の興収25億がやっとという状況。また、長らく年にレギュラーシリーズとクロスオーバーシリーズを交互に2作品が春と秋に公開されてきた映画『プリキュア』シリーズは、コロナによってそのリズムが崩れたことと2021年に公開された2作品の不調を受けてか、2022年の春作品はスキップされることとなった。

 『ドラえもん』シリーズにせよ、『プリキュア』シリーズにせよ、あるいは今週末に新作『映画クレヨンしんちゃん もののけニンジャ珍風伝』が公開される『クレヨンしんちゃん』シリーズにせよ、フランチャイズ作品には疲弊がつきもの。むしろ、パンデミック期に入る前まで多くのシリーズが順調に数字を伸ばしていたこと自体が異例だったわけだが、ここにきてその真価が問われる局面に入っている。

 そういう意味では、緊急事態宣言によって失速したとはいえ前作でオープニング記録を更新し、第一作から25年を迎えた今作も好調な『名探偵コナン』シリーズは、実写映画も含めて現在も続行中の国内作品の中では奇跡的に右肩上がりを維持している超優良フランチャイズと言える。自分は『名探偵コナン』シリーズのファンではないが、これまで入場者特典によるドーピングを連発してこなかったところにも好印象を持っている。メディアによっては早くも「100億超の見通し」などと煽っているところもあるが、どこかの作品のように無理にドーピングまみれで興収100億を狙わなくても、作品内容のクオリティさえこのまま保っていれば、本作ではなくてもそのタイミングは近いうちにくるだろう。

■公開情報
劇場版『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』
全国東宝系にて公開中
原作:青山剛昌『名探偵コナン』(小学館『週刊少年サンデー』連載中)
キャスト:高山みなみ、山崎和佳奈、小山力也、古谷徹ほか
監督:満仲勧
脚本:大倉崇裕
音楽:菅野祐悟
配給:東宝
製作:小学館/読売テレビ/日本テレビ/ShoPro/東宝/トムス・エンタテインメント
(c)2022 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
公式サイト:http://www.conan-movie.jp

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