初登場4位『モービウス』の苦戦にみる、ユニバース作品の難しさ

『モービウス』にみるユニバース作品の難しさ

 先週末の動員ランキングは、『SING/シング:ネクストステージ』が、土日2日間で動員19万2000人、興収2億5300万円をあげて3週連続1位の首位となった。公開から17日間の累計で動員は169万8573人、興収は21億1798万1670円。これは『SING/シング:ネクストステージ』の2週前に公開された『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』とほぼ横並び、同じく2週前に公開された『余命10年』をほんの少し下回る数字となる。つまり、現在までの公開日数を加味するなら、2022年春休みの映画興行を制したのは東宝東和配給の『SING/シング:ネクストステージ』。続いて、結局週末の動員ランキングでは一度もトップにはならなかったワーナー配給の『余命10年』、その後に東宝配給の『映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021』が続くということになる。東宝配給国内アニメ作品への偏重が続いてきたコロナ以降の映画興行に、『SING/シング:ネクストステージ』と『余命10年』は一矢を報いたかたちとなった。

 今回とりあげるのは先週末の動員ランキングで4位に初登場したダニエル・エスピノーサ監督によるソニーズ・スパイダーマン・ユニバースの最新作『モービウス』。土日2日間の動員は10万1000人、興収は1億6100万円。初日から3日間の累計では、動員が16万5866人、興収が2億4323万6000円。これは、昨年12月に公開されたソニーズ・スパイダーマン・ユニバースの前作『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』のオープニング成績の約39%の数字となる。もともとのコミック・キャラクターとしてのヴェノムとの人気の差に加えて、シリーズ2作目だった『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』と比べて映画ファンの間でもキャラクターの認知度に歴然とした差があるとはいえ、これを「好スタート」などと報じている他のウェブメディアのランキング記事は目を通す価値さえないと断言させてもらう。

 現在、スーパーヒーローのユニバース作品は、ディズニー配給(『スパイダーマン』シリーズのみソニー配給)及びディズニープラス配信によるマーベル・シネマティック・ユニバース、同じマーベル・コミックを原作とするソニー配給によるソニーズ・スパイダーマン・ユニバース、DC原作のワーナー配給によるDCエクステンデッド・ユニバースという三つのユニバースが展開されている。Netflix期のテレビシリーズやフォックス期のX-MENシリーズとマーベル・シネマティック・ユニバースとの融合を模索中のディズニー、ユニバース作品外のDC作品である『ジョーカー』や『THE BATMAN-ザ・バットマン-』ばかり大ヒットしているワーナーと、それぞれ課題は抱えている中で、ソニーは『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の記録的ヒットとの相乗効果もあって前途洋々にも思えた矢先の今回の結果。理由はいくつか挙げられるが、その一つはユニバース作品の難しさにあるのではないだろうか。

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