『SATC』新章が描いた50代の新たな人生 キャリーたちが辿り着いた道とは

『SATC』新章が描く50代の新たな人生

 『セックス・アンド・ザ・シティ』(以下『SATC』)シリーズの約20年後を描いた『AND JUST LIKE THAT... / セックス・アンド・ザ・シティ新章』(以下、『AJLT』)。待ち望んでいたファンも多かったはず。日本では3月2日、U-NEXTでの配信をもって最終回を迎えた。

 3月9日からドキュメンタリーも配信され、まだまだ世界中で『SATC』熱は収まらない。ドラマ全6シーズンの中では、NYで働くキャリー(サラ・ジェシカ・パーカー)、サマンサ(キム・キャトラル)、ミランダ(シンシア・ニクソン)、シャーロット(クリスティン・デイヴィス)の4人組の恋物語を中心にを描き、映画2作品ではさらにステップアップした彼女たちの生活を垣間見ることができた。

  それから20年数年経った現代を描いた『AJLT』では、50代になった彼女たちのあらゆる「変化」が描かれている。

キャリー・ブラッドショーの変化

 コラム「セックス・アンド・ザ・シティ」などのライターとして働く一方で、恋愛も奔放だったキャリーといえば「靴」。彼女の大好きな靴はドラマや映画でもキーとなっており、結婚式の日に履いたマノロ・ブラニクの靴は今作でももちろん登場。

 そんな彼女は映画1作目でミスター・ビッグ(クリス・ノース)と結婚し、映画2作目ではミスター・ビッグとの“魔の3年目”を何とか乗り越え、約20年経った今でも二人だけで幸せに暮らしていた。ところが、本作第1話で突然愛する夫の死に直面することとなる。50代にしてはなんとも早すぎる、悲しい出来事だった。

 また。携帯電話が苦手だったキャリーは20年経った今や、ライターの傍らポッドキャストも行っている。SNSも始め、変わった物の写真を撮りまくる、時代にあった人間に変化していたのだ。そして、身体にも変化が。映画でミスター・ビッグに借りていた老眼鏡が今では必需品になり、さらに股関節に痛みが出て入院するまでになってしまうのだった。友人たちが手伝いをしてくれるが、彼女たちにも生活があり、家族ではない。ひとりでは何もできない、ひっそりと訪れた「孤独」を受け入れなければならなかった。

 新たに出来た友人のシーマ(サリター・チョウドリー)も、キャリーと同世代で独身を貫いていた。50代では生涯の伴侶がいるのは当たり前なのか、いないといけないのか。ドラマの時代とは違い、50代にもなると新しく恋愛をしようにも過去の経験とどうしても比較してしまうようで、キャリーも出会い系アプリにチャレンジしてみるもののあまり上手くはいかず。それでも自分が思うままに生きることで、幸せは舞い込んでくる。本作を通してキャリーがそう教えてくれたように思う。

ミランダ・ホッブスの変化

 ドラマ『SATC』で、スティーヴ(デヴィッド・エイゲンバーグ)との間にブレイディ(ニール・カニンガム)をもうけたミランダ。家族3人で、弁護士としての仕事も順調だった。

 そんな彼女は本作で、人権弁護士になるためにまた大学で勉強することに。ジェネレーションギャップに怯えながらも自ら学ぼうとする姿や、頑張りすぎて空回りしてしまう姿もミランダらしい。彼女は大学で教授のナヤ(カレン・ピットマン)と出会い、ナヤが子供をもうけるかどうかで夫婦関係が上手くいっていないこと知る。それを聞き、「自分達夫婦の関係はすでに冷めきっているのでは?」と現実に直面するのだった。

 そんな中ミランダは、キャリーと一緒にポッドキャストをしているスタンドアップコメディアンでノンバイナリーを公言しているチェ(サラ・ラミレス)に出会う。「彼ら」(作中でも、ノンバイナリーの人に対しては、相手が一人でも代名詞は「彼ら(They)」と表すとされている)の自分らしく生きる姿や魅力に惚れ込み、2人は恋に落ちていく。

 実際、ミランダを演じているシンシア・ニクソンは、長年連れ添った男性のパートナーと別れ、現在同性のパートナーと結婚している。そのような経験もあり、シンシアはキャリー役のサラ・ジェシカ・パーカー、シャーロット役のクリスティン・デイヴィスと共に製作総指揮としてもこの作品に携わっていて、第6話では監督として活躍の幅を広げた。

 今まで弁護士として、世のため、家族のために働いてきたミランダは、今作で50代でも自分らしく生きてもいいじゃないかと、強く決意を固めたように思う。ミランダが、母でも妻でもない1人の人間として生きることを決めた時の、生き生きした表情には視聴者としても心を動かされる。髪色も、白髪からミランダらしい赤毛に戻り、ドラマシリーズ時のミランダが帰ってきたようだった。

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