『二十五、二十一』ヒドの悲痛さ沁みる第7話 心の傷が深まるユリムと2人を見つめるイジン

『二十五、二十一』ヒドの悲痛さ沁みる第7話

 一瞬にして地獄に叩きつけられた日。夢や希望、憧れも恋もすべてを手にしていいんだと思えた日。思い切り傷ついて、いつの間にか成長して、初めての感情にやきもきして。Netflixで配信中の韓国ドラマ『二十五、二十一』の第7話と第8話は、まさに青春、真っ盛り。

 「実力は坂じゃなくて階段のように上がる」。ナ・ヒド(キム・テリ)は父の教えのままフェンシングと向き合ってきた。今は、大好きだった亡き父の代わりに、「誰よりも負けた経験で階段を積み上げてきたからほしいものを手に入れろ」とヒドを応援して見守ってくれるペク・イジン(ナム・ジュヒョク)がいる。

 アジア大会の決勝戦。同じ学校で同学年のコ・ユリム(ボナ)とヒドの戦いは注目を集めていた。とりわけ盛り上がりを見せたのは解説者の立場で中継していたヤン・チャンミ(キム・ヘウン)コーチ。王者ユリムのプレッシャーを理解し、ヒドを信じる気持ちが、公共の電波に乗せた教え子たちへの愛があふれるエールが、何度も何度も目頭を熱くさせる。

 試合は1点を先取した方が優勝の大接戦。観客席がユリムを応援する状況でもヒドは何ひとつ変わらない。フェンシンシングを始めた時と同じように今この瞬間もフェンシングが「面白い」と感じている。何よりも、今日が“夢を叶える日”になると決めていた。フェンシングの試合は、“アンガルド=構えて”、“プレ=用意”、“アレ=スタート”の合図で始まる。言葉どおり、戦う準備ができていたヒドが夢を掴んだ。

 ところが、世間がヒドから“金メダル”を奪った。多くの大人たちが「誤審ではなかったのか?」と本人を責め立てる。たまらなくなって金メダルを置いて記者会見から逃げ出したヒド。やっと登りつめた階段の先が「おめでとう」ではなく「ユリムに悪いと思わないのか」と非難される世界だったなんて胸をえぐられる思いである。

 いつかと同じ、見知らぬ街にいたヒドを迎えにきたのはイジンだった。優しく慰めるわけでもなく「さっきの態度は正しいと思うか?」と正論を投げる姿が、第3話でユリムとケンカしたヒドに「ユリムが悪いと言ったところで解決するとは思えない」と言った時のイジンと重なる。今回も「誤審だったとしてもお前も被害者だ」と声のかけ方が不器用なイジン。そんなイジンに剣を持たせ、誤審ではなかったと伝えるために何度も「プレ アレ」とイジンに向かって剣を突くヒド。ブレずに真っ直ぐに突くヒドの剣が、2人の温度差と距離を埋めていく。求められる言葉を言うのは簡単だ。イジンはその簡単なこともできないのかもしれない。それでも「戻ろう、ヒド」と必要な言葉をかけられるのは、やっぱりイジンだけだ。

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