『真犯人フラグ』は芳根京子のもの 主演に加え“3番手”でも輝き放つ役者に進化
この3本のテレビドラマからは、明らかにセンスの高さだけで走り抜けていたこれまでとはまるで違う成長を窺うことができる。もっとも、2021年に公開された2本の出演映画では、まだ底知れぬセンスによって周囲を圧倒する演技を見せてくれるのだからそのバランス感覚はおもしろい。島本理生の小説を原作にした『ファーストラヴ』では父親を殺してセンセーショナルにマスコミから取り上げられる殺人犯役を演じる。北川景子演じる臨床心理士と面会する拘置所でのアクリル板越しのシーンの演技は見応え十分であり、原作で書かれた役柄のディテールを緻密に再現しながら、観客を引き込んでいく怪演を披露する。強いていえば『累-かさね-』で見せたダークな一面をより文学的な奥行きを持たせて進化させたものか。
そしてもう一本、ケン・リュウの短編小説を映画化した『Arc アーク』では、30歳のまま年を取らない女性の100年間を演じ抜く。作品自体が日本映画らしからぬ設定を持ち合わせ、役柄的にもなかなかトリッキーな難役であるゆえ、その違和感をカバーするだけの表現力が求められることはいうまでもない。ここでもまた、観るものを圧倒するような芳根京子の持ち味はそのまま活かされている。その上で、次のレベルでは一体どこに落ち着けるべきかという模索も見え、これはなかなか新鮮な印象を受けた。
忌憚なく言うならば『表参道高校合唱部!』でその名が世に知れ渡り、かなりあっという間に朝ドラ『べっぴんさん』(NHK総合)で全国区となった後に、他の朝ドラ女優と同じようにブレイク路線に乗りつつも、いまひとつ弾けきれなかったのがここ数年の彼女のキャリアではないだろうか。しかし同世代では群を抜いた表現力を持ち合わせいることはすでに何度も証明されており、ここに挙げたこの2年の作品を経た『真犯人フラグ』での“助演”としての卓越した存在感と群像性を立てる巧さ、ドラマ全体をかき回すだけの独占力の強さの両立からすれば、たとえ“真犯人役”であろうとなかろうと、すでにこのドラマは芳根京子のものだ。
■放送情報
『真犯人フラグ 真相編』
日本テレビ系にて、毎週日曜22:30~23:25放送
企画・原案:秋元康
出演:西島秀俊、佐野勇斗、芳根京子、 桜井ユキ、生駒里奈、柄本時生、柿澤勇人、長田成哉、坂東龍汰、吉田健悟、小林きな子、森田甘路、竹森千人、BOB、青木瞭、中西美帆、渥美友里恵、町田愛、南彩加、遼太郎、原菜乃華、堀野内智、小林優仁、渋川清彦、深水元基、迫田孝也、丘みつ子、浜田晃、小松利昌、戸田昌宏、正名僕蔵、平田敦子、田中哲司、宮沢りえ
脚本:高野水登
音楽:林ゆうき、橘麻美
演出:佐久間紀佳、中島悟、小室直子、長沼誠
チーフプロデューサー:加藤正俊
プロデューサー:鈴間広枝、松山雅則
制作協力:トータルメディアコミュニケーション
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/shinhannin-flag/
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