『カムカム』深津絵里の歌声はまるで祈り 若者たちが“ひなたの道”を歩むことを願って

『カムカム』深津絵里の歌声はまるで祈り

<もしも君が不確かな明日に心震わせているのなら私だってそうよ friend>

 これは、主題歌「アルデバラン」の2番に出てくるワンフレーズ。『カムカムエヴリバディ』第90話は、そんなふうにるい(深津絵里)や錠一郎(オダギリジョー)が人生の分岐点に立ったひなた(川栄李奈)と文四郎(本郷奏多)に語りかける回だった。

 時代の波にのまれ、逸れてしまったひなたと文四郎。別れの日からふさぎ込んでいたひなたの頭には、何度も「ひなたの放つ光が俺には眩しすぎる」という文四郎の言葉が浮かぶ。

「凛として、弱音を吐かず、こうと決めたことは命がけでやりとげる」

 そんな侍のように、映画村の存続を賭けて戦い続けるひなたに五十嵐は誰よりも憧れ、同時に自分の弱さを突きつけられているみたいで苦しかったのだろう。かつて苦しみを分かち合おうとしたるいに錠一郎が放った「もう解放してくれ」という言葉が、文四郎の台詞に重なる。錠一郎にはその気持ちが痛いほど分かり、自ら文四郎に会いに行った。

 そこで語ったのは、夢を諦めざるを得なかった自分の過去。ミュージシャンとしてデビューし、レコードとCDを出して、いつかジャズの本場であるアメリカに渡る……そんな錠一郎が叶えられなかった夢を、ライバルだったトミー(早乙女太一)が全部叶えていたことをここで私たちは初めて知る。文四郎が狙っていた左近役を見事射止め、時代劇の主演にも抜擢された武藤蘭丸(青木崇高)のように。生きる意味を奪われ、暗闇がどこまでも続くかのように思われたあの頃。錠一郎はるいが差し伸べた手を取り、もう一度ひなたの道に向かって歩き始めた。

「そしたら生まれてきてくれた。眩しい光の塊みたいなひなたが」

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