【ネタバレあり】『愛しい嘘』林遣都の“中野くん”は記憶に刻まれる 賛否両論の結末に

『愛しい嘘』最終回は賛否両論の結末に

 波瑠と林遣都を中心に10代の頃から第一線で活躍してきた同世代の豪華俳優陣を携え、サスペンスでありながら、同時に愛憎渦巻く人間ドラマを展開してきた『愛しい嘘~優しい闇~』(テレビ朝日系)。ついに衝撃のラストを迎え、改めて悲劇の始まりとなった同窓会で玲子(本仮屋ユイカ)が主人公・望緒(波瑠)に投げかけた問いが思い起こされる。

「人を傷つけてでも、これだけは絶対譲れないって思ったものある?」

 思えば、この集まりで14年ぶりに再会した望緒の同級生たちはそれぞれの胸に“愛”を秘めていた。でもそれは時に人を狂わせる。“愛”を貫くために嘘をつき、誰かを容赦なく傷つけることもある。雨宮(林遣都)を手に入れようとし、結果的に命を落とすことになった奈々江(新川優愛)や優美(黒川智花)もそう。そして、整形までして雨宮になりすまし、望緒の前に現れた中野(林遣都/二役)も。その中で当初、無欲に思えた望緒は最後にようやく絶対譲れない“愛”に辿り着いた。

 「同級生“不審死”事件」の残酷な真相を突きつけられた直後、中野の子を身籠っていることを知った望緒。稜(溝端淳平)や玲子にも相談できず、一人で将来への不安を抱え込む彼女に暗い影が忍び寄る。その影の正体は自分から顔と人生を奪った中野に復讐を果たんとする本物の雨宮だった。雨宮は中野から大切なものを奪うため、望緒を殺そうとしていたのだ。

 しかし、危機一髪で中野が駆けつけ、ついに因縁のある二人が対面。雨宮と中野が対峙する場面を実現させた合成技術もさることながら、林遣都の演じ分けに注目が集まった。望緒を人質にとってすべての罪を中野になすりつけようとする雨宮と、そんな彼から望緒を守るためにすべての罪を被ろうとする中野。見た目は瓜二つでも、同じ人間とは到底思えない。ついには実の母親であるサユリ(高橋ひとみ)の手にかけられてしまう雨宮は哀れなほどに“愛”を知らない人間だった。

 彼が当たり前のように享受し、感謝することもなかった幸せをどれほど中野は欲しがっていたか。たくさんの友人に囲まれ、たった一人だけ自分のことを気にかけてくれた望緒の心でさえも掴んでいた雨宮。そんな憧れの立場にいた人物に支配される地獄のような日々から抜け出すための決断が、本当ならば“中野幸”として隣に並びたかった人たちを傷つける結果になってしまったなんて悲しすぎる。その罪を償うため、中野は自ら命を絶とうとしていた。しかし、望緒は雑誌に掲載した“ファン”へのメッセージで雨宮が亡くなった後しばらく行方をくらませていた中野を中学の校舎におびき寄せる。そう、彼こそがずっと望緒にファンレターを送っていた“クロ”だった。

 本作は漫画家として芽が出ず、自信を喪失していた望緒の成長物語でもあった。中学生の頃、自分の背中を押してくれた中野に望緒は大人になってからも励まされ続けていたのだ。そして、前述した玲子の問いに応えることができなかった望緒は誰かに非難されようとも、過去をひっくるめて中野と共に生きるという決断をする。刑務所から出てくるまで待ち続けると約束し、かつてのように「またね」と言葉を交わす二人。

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