『逃亡医F』成田凌の涙の演技がもたらす痛み 真実に向かい、物語が大きく動き始める
大きく物語が動いた『逃亡医F』第7話(日本テレビ系)。何度、藤木(成田凌)の涙を見たことだろう。真実に辿り着きたい、ただそれだけなのに、どれほどの痛みを伴い、犠牲を払い、涙を流さなければならないのだろう。けれど藤木は、お天道様にも、眠り続ける妙子(桜庭ななみ)にも、後ろめたいことは何一つしていない。それだけは確かなことであるはずだ。
廃団地での騒ぎを聞きつけ、警察がやってきた。さらにはもみ合いの末、藤木は重傷を負ってしまう。病院に行くことのできない藤木に選択の余地はなく、自分自身でオペを敢行。そのための時間稼ぎとして警察の足止めをはかるべく、拓郎(松岡昌宏)、モー(中村蒼)、美香子(森七菜)は、立てこもり事件をでっちあげることに。消去法で、犯人役に任命されたのは美香子。必死で止めようとする藤木に、美香子は「自分の意思で行動してますから」と、「先輩」の顔で明るくふるまった。心配させないための言葉であり、本音でもあるだろう。
作戦において大切なのは、犯罪「スレスレ」であること。武器は持たない、凶悪犯だとは思わせない、動機にはしょうもない理由を並べ立てるーーけれど、要求だけは本心だった。「愛し合う外国人に永住権を与えること」。作戦としては「スレスレ」を越えたかもしれないが、美香子のこの言葉が、のちにモーたちの心を動かすことになる。
夜を待ち、全員での脱出を試みるが、警察はすぐそこまで迫っていた。「自分たちは捕まっても強制送還にならないから」と、A棟の日本人らは自ら囮となって時間を稼ぐ。ともに藤木のオペを見守り、同じ時間を過ごしながら、A棟とB棟の住人たちには国を超えた輪ができていた。モーが言うように「日本人」「外国人」としてではなく、一人ひとりの人間として分かり合い、助け合う心が生まれていたのだ。この瞬間があと1日でも早く生まれていれば、騒動は起こらず、このまま暮らせたかもしれないのにーー。
それでも、全員での脱出は物理的に不可能だった。今度はB棟の住人が囮になるという。止める藤木にモーは「人間同士が生きるために互いを頼ることを、迷惑とは言わない」、持ちつ持たれつだと言った。そして、ミャンマーにも中国にも、お天道様さまはあるのだと。このまま不法滞在を続けていてもチュンヤン(森迫永依)を幸せにはできないと、どこかでけじめのときを待っていたのかもしれない。藤木を逃がすため、手をつないで投降するB棟の住人たち。そこへ主題歌「太陽が見ている」が流れる。「愛し合う外国人に永住権を」。確かな人間愛で結ばれたB棟の優しい人たちに、どうかこの先、幸あらんことを願う。