快挙続く『ドライブ・マイ・カー』主演の西島秀俊 『真犯人フラグ』との演技の違いに注目

西島秀俊、映画とドラマで見せる異なる顔

 昨年開催された第74回カンヌ国際映画祭での4冠獲得をはじめ、現時点で第94回アカデミー賞の4部門でのノミネートなどいまだに快挙のニュースが止まらない『ドライブ・マイ・カー』(2021年)。ゴールデングローブ賞、全米映画批評家協会賞などでの受賞の報を受け、いままた話題再燃となっているところだ。当然ながら、主演を務めた西島秀俊にも熱視線が集中するというもの。彼は第45回日本アカデミー賞の主演男優賞にも選出されている。

『ドライブ・マイ・カー』(c)2021 『ドライブ・マイ・カー』製作委員会

 そんな“映画俳優”のイメージも強い西島は、現在放送中の『真犯人フラグ 真相編』(日本テレビ系)で主演を務めているところ。前クールの朝ドラ『おかえりモネ』(2021年/NHK総合)ではヒロインに大きな影響を与える主要な役どころを担い、ドラマの完走まで走り続けた。これらのことから、彼を映画俳優ではなく、ドラマ俳優だと認識している方も少なくないのではないかと思う。この認識は、世代や、興味・関心の向きによって変わってくるはずである。

 西島と近い世代や、それより上の世代の方は、彼が「トレンディ俳優」と呼ばれていた頃のことをご存知なのだろう。西島が20代前半の頃は、彼のキャリア初期の代表作『あすなろ白書』(1993年/フジテレビ系)などのトレンディドラマに立て続けに出演していた。その後、俳優活動の方向性を大きく転換。活動のフィールドを映画へと移した。諏訪敦彦監督の『2/デュオ』(1997年)や、黒沢清監督による『ニンゲン合格』(1999年)は、西島のキャリア初期において、彼が映画俳優としてのキャリアを築きつつあった若手俳優時代を象徴する作品だろう。

 その後は、菅野美穂と共演した北野武監督作『Dolls』(2002年)や、オウム真理教の事件をモチーフとした塩田明彦監督の『カナリア』(2005年)、『海でのはなし。』(2006年)、『東南角部屋二階の女』(2008年)などなど、比較的小規模な作品や、芸術性の高い作品に次々と出演。映画俳優としての西島を愛する者ならば、このあたりの作品はもちろん押さえていることだろう。そしてそんな彼が映画俳優として、一人の映画人として、一度たどり着いた到達点に、2011年公開のアミール・ナデリ監督作『CUT』があるのだと思う。西島がコアな映画ファンであることは広く知られていることだが、同作で演じた映画マニアの青年の狂気は、西島でなければ体現できないものだっただろう。映画を愛する者たちの叫びを、彼は代弁した。西島を映画俳優だと見なす、一つの根拠である。

 一方でこの頃、再びテレビドラマのフィールドでも地盤を固めていた。『ストロベリーナイト』シリーズ(2010年〜2013年/フジテレビ系)や『MOZU』シリーズ(2014年/TBS×WOWOW)、このあたりの作品で西島の存在を認知した若い世代の方は多いのではないかと思う。そしてどちらの作品も、「劇場版」が制作された。彼の“映画俳優としての顔”と、“ドラマ俳優としての顔”が共振し始めた頃だ。昨年は、『奥様は、取り扱い注意』(2017年/日本テレビ系)と『きのう何食べた?』(2019年/テレビ東京系)の「劇場版」が公開されたというのが面白い。

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