『カムカムエヴリバディ』るいと錠一郎の“音” 安子編とも重なる無音演出がもたらす効果

『カムカム』安子編と重なる無音演出の効果

 第59話でも、再び用いられた無音演出は錠一郎の大きな心の“波”を捉えていた。前話で音が聞こえてこなかった、るいとの思い出。しかし、先述のラジオから流れてきた「On The Sunny Side of the Street」が耳に入るとその様子が一変する。このシーンでは、楽曲の音よりも彼女と行った海の波の音の方が大きく流れている。そして、各々にとって大切だったこの曲が“二人にとって”大切になった瞬間を意味する会話の方が強調されているのだ。カットインで涙を流するいの様子から、彼女も同じあの日のことを思い出していることがわかる。

カムカムエヴリバディ

 そして、ラジオから流れる「サニーサイド」は一切聞こえなくなり、二人が歌う「サニーサイド」が聞こえた。その瞬間、再び無音の中でるいは走り始める。安子が息を切らしながら、愛する人の名を呼んだように「ジョーさん」と息を切らして彼の元へ駆けつけた。そして海辺でも、入水自殺を図ろうとしていた錠一郎に向かって、繰り返し“その名を叫んだ”。

 安子編と反復する、この無音演出。そうすることで、より登場人物の心情描写を大胆に、そして生々しく表現する『カムカムエヴリバディ』。こうなってくると、次の“無音”のタイミングにも注目して観ていきたい。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:上白石萌音、深津絵里、川栄李奈ほか
脚本:藤本有紀
制作統括:堀之内礼二郎、櫻井賢
音楽:金子隆博
主題歌:AI「アルデバラン」
プロデューサー:葛西勇也・橋本果奈
演出:安達もじり、橋爪紳一朗、松岡一史、深川貴志、松岡一史、二見大輔、泉並敬眞ほか 
写真提供=NHK

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