『カムカム』“るい編”はオシャレな朝ドラ? 1960年代カルチャー要素を解説
三世代のヒロインがバトンを受け継ぎながらラジオ英会話との歩みを描くNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』は、安子編を終え、るい編の最中だ。
ひたむきで力強く生きた安子(上白石萌音)、そしてその母との思い出や額の傷に苦しみながらも“生きる道”を模索する、るい(深津絵里)を多くの人が応援していることだろう。そんな、るい編ではストーリー以外にも注目したいポイントが多くある。今回は『カムカムエヴリバディ』の描くお洒落な衣装や文化の息吹に焦点を当てて紐解いていきたい。
色鮮やかでレトロなファッション、レコード、ジャズ喫茶。カルチャーが好きな現代の若者にとっても胸が高鳴るような要素がたっぷり詰まっている。戦後の1960年代、高度成長期にスタートしたるい編は街並みもファッションも全てが美しく鮮やか。『ビッグさんのカムカム英語 みんな来いジャズ』の楽曲に合わせながらミュージカルを歌い踊るシーンや、デートのためにワンピースを選ぶ姿など、度々ブティックが登場し、店内にはかわいらしいシルエットのドレスや胸が高鳴るような色合いの服が並ぶ。どこか愛着のわくシルエットだと感じるのは、ファッションがめぐりめぐるものだから。るいの着ている開襟ワンピースや、ベリー(市川実日子)の纏うビタミンカラーは定期的にトレンドの先端へと躍り出る。
加えてベリーはヘアスタイルや小物遣いも気が利いているのだ。お嬢様育ちのベリーはまさに、本作のファッションリーダー。ドライブデートのシーンではサングラスとイヤリングを使ったスタイリングを見せ、喫茶店のシーンではスカーフを使ったヘアアレンジも披露した。このスカーフは2019年秋頃から何度目かの流行中で、現在もバッグや首元、ヘアアレンジにと大活躍のファッションアイテムとなっている。
この投稿をInstagramで見る
さらにドライブのシーンでいえば、トミー(早乙女太一)の愛車であるフォルクスワーゲン車の「カルマンギア・カブリオレ」にも注目したい。
1960年代は日本の経済が上向きの時代であったが、それでも車を持つことは誰にでもできることではなく、かなり特別なことだった。車を所有するということは、トランペットの英才教育を受け、取り巻きも多いトミーが時代の最先端で輝いていることの象徴なのだと感じる。あのスポーツカーの登場はデートシーンを華やかに彩ることに加え、キャラクターの個性にも踏み込んだ粋な演出だったと言えよう。