『鎌倉殿の13人』小池栄子と新垣結衣が見せた異なる強さ 頼朝は底知れぬ怖さを放つ

『鎌倉殿の13人』政子×八重の異なる強さ

 最も印象的なのは八重と政子が対面するシーンだ。政子は八重に頼朝へ抱く感情を断ち切ってもらうため伊東へ出向く。八重は厳しい表情で「なぜそのようなずうずうしいまねをする」と聞く。対する政子も、はっきりと本心を口にし「お会いになりたいなどと二度と思いになりませぬよう」と返した。きっとした目つきで政子を見る八重と、目を開き、八重をまっすぐに捉える政子。ただならぬ緊張感が漂う中で、八重は頼朝が必要としているのは政子であると察し、その凛とした姿勢を崩すことなく呟いた。

「伊東から北条へ乗り換えたということか、何もかも」

 それでも八重は強い。頼朝への思いも、八重自身も。八重は政子に「佐殿は難しいお方」と彼の気難しい性格を打ち明け、寝汗をかくことがあるから手拭いを用意するようにと助言する。そして八重は「思いを断ち切ることはできぬ。しかし……断ち切るようには努めます」と言ってその場を去った。頼朝への想いを残しながらも、政子を必要としている事実を受け入れる八重の強さ。八重演じる新垣の、静かだが凄みのある演技あってこそ感じられるものである。また八重が立ち去った後、政子演じる小池の表情が、八重の強さには遠く及ばないと感じているように見えたのも印象深かった。

 八重と政子、2人の女性の強さも魅力的だが、物語の終わりに垣間見えた頼朝の底知れなさにも魅了される。政子を頼朝に近づけてはならないと言い、宗時の思いの強さを諫めていたはずの義時は、頼朝が「いずれわしは挙兵する」「都に攻め上り、にっくき清盛の首を取りこの世を正す」「そのために、政子が、北条が欠かせぬのだ」と力強く宣言したことで、その威厳に圧倒されてしまった。決して心の内を見せない頼朝が、義時にだけ本心を明かす。しかしこれが本当に本心なのかどうか掴みきれないのが、大泉演じる頼朝の魅力といえる。SNS上では、心中が読み取れない頼朝に底知れぬ怖さを感じている視聴者の姿も。頼朝と出会ってしまった義時は、これからどんな人生を歩むのだろうか。

■放送情報
『鎌倉殿の13人』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:小栗旬
脚本:三谷幸喜
制作統括:清水拓哉、尾崎裕和
演出:吉田照幸、末永創、保坂慶太、安藤大佑
プロデューサー:長谷知記、大越大士、吉岡和彦、川口俊介
写真提供=NHK

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