『TOKYO MER』脚本家・黒岩勉の快進撃 少年漫画の爽快感をテレビドラマに移植?

 脚本家・黒岩勉の快進撃が続いている。

 2021年は『らせんの迷宮~DNA科学捜査~』(テレビ東京系)、『消えた初恋』(テレビ朝日系)、そして映画化が決まった『TOKYO MER~走る救急救命室~』(TBS系/以下『TOKYO MER』)の3本の連続ドラマを執筆。今年は、映画『キングダム2 遥かなる大地へ』と劇場アニメ『ONE PIECE FILM RED』の脚本が決まっている。

 テレビドラマには多作の脚本家が少なくないが、黒岩のように原作ものもオリジナル作品も幅広く手掛ける一方で、映画やアニメの脚本まで書くという作家はめずらしい。

 彼が手掛けてきた作品を観ていると、基本的には娯楽作を中心に手掛けるエンタメ系職人作家という印象だが、どの作品も彼ならではの独自の手触りがある。

 黒岩は大学卒業後、ラジオやテレビ番組の構成作家として活躍。2008年の第20回フジテレビヤングシナリオ大賞の佳作を受賞し、『世にも奇妙な物語~2009春の特別編~』(フジテレビ系)のエピソード『自殺者リサイクル法』で脚本家としてデビューする。

 その後、『LIAR GAME Season2』(フジテレビ系)で連続ドラマデビュー。本作は甲斐谷忍の同名漫画をドラマ化した作品で、昨年大ヒットした韓国ドラマ『イカゲーム』に影響を与えた「デスゲームもの」の傑作として知られている。

 極限状況での心理的駆け引きをエンタメとして見せると同時に、格差社会の暗喩としての理不尽なゲームをプレイヤー同士が信用し合うことで勝利していく姿を描いた作品だった。古家和尚が脚本を担当したシーズン1を引き継ぐ形での執筆だったが、原作ものということを差し引いても、初の連ドラとは思えない見事な仕事だった。ドラマ脚本家としての力量は、本作で証明されたと言って間違えないだろう。

 その後、黒岩は『謎解きはディナーのあとで』(フジテレビ系)や『ようこそ、わが家へ』(フジテレビ系)といったミステリー系の作品を多数手掛けることで脚本家としての地位を確立していく。そして、黒岩の名が広く知られるようになったが、2016年に発表したオリジナルドラマ『僕のヤバイ妻』(関西テレビ・フジテレビ系)だ。

 本作は、カフェを経営する夫・望月幸平(伊藤英明)の妻・真理亜(木村佳乃)が何者かに誘拐されたことから始まるサスペンスドラマ。幸平は愛人の北里杏南(相武紗季)と共に真里亜の殺害を計画していた。しかし妻が誘拐されたことで計画は狂い、物語は予期せぬ方向へと転がっていく……。

 誘拐された真里亜の身代金2億円を巡って駆け引きを繰り広げる姿は『LIAR GAME』と同じ「デスゲームもの」と言えるが、主人公の望月も含めて登場人物が全員、金のために相手を殺すことに躊躇がないため、物語はどんどんエスカレートしていく。

 面白いのは各登場人物の描き方。決断が素早く思い切りが良いため「騙して殺して金を奪う」という犯罪行為の連鎖でありながら、どこか清々しい。

 黒岩は「スポーツ中継のようなドラマにしたかった」※1 と語っているが、確かにスポーツ選手のファインプレーを見ているような“清々しさ”が本作にはある。



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