若手がいない? 森下佳子、宮藤官九郎らベテラン勢の活躍の裏にあるドラマ界の脚本家事情
先日、最終回を迎えた『書けないッ!?~脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活~』(テレビ朝日系、以下『書けないッ!?』)は、連続ドラマの脚本家に抜擢された売れない脚本家・吉丸圭佑(生田斗真)の物語だ。
初めての連ドラ執筆は波乱の連続で、急遽決定したため数日でドラマのアイデアを出すことを要請され、プロデューサーに何度もダメ出しされる。同時に主演俳優も無茶な要求をしてくるため、脚本は二転三転。現場の注文に翻弄される吉丸は、厳しいスケジュールの中でなんとか第1話を書き上げるが、第2話を書く予定だったシナリオコンクールで最優秀賞を受賞した大学生の若手・如月翔(小越勇輝)が、脚本家を降りてしまったことで、吉丸は全話の執筆を急遽担当することになってしまう。
本作の脚本は『HERO』(フジテレビ系)等で知られる福田靖。脚本家&テレビドラマのあるあるネタが散りばめられたコメディだが、リアルに感じるのはドラマ制作の都合で何度も書き直しを命じられる吉丸の姿と、書き直しの要求に応じず、あっさりと降りてしまう若手脚本家という対比が序盤ではっきりと示されたからだろう。
2021年冬クールドラマに集結した、ベテラン脚本家たち
森下佳子(TBS系『天国と地獄 ~サイコな2人~』)、宮藤官九郎(TBS系『俺の家の話』)、北川悦吏子(日本テレビ系『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』)、岡田惠和(テレビ朝日系『にじいろカルテ』)、橋部敦子(テレビ朝日系『モコミ~彼女ちょっとヘンだけど~』、フジテレビ系『知ってるワイフ』)、福田靖といった実力のある脚本家が勢揃いした2021年冬クールドラマだが、気になるのは脚本家の年齢が高齢化しており、新人の影が薄いことだ。
もちろん、ベテランにはベテランの魅力がある。宮藤官九郎の『俺の家の話』のような介護をテーマにした作品が作られる状況は、テレビドラマの豊かさの現れであり、宮藤たち作り手と共に年を重ねてきたからこそ味わえる喜びを筆者も毎週、堪能している。だが一方で、果たしてこれを10代~20代の視聴者が観たいと思えるのだろうか? とも考えてしまう。
80年代後半のトレンディドラマブーム以降、ドラマは若い視聴者を獲得していったのだが、その勢いを支えしていたのが、1987年からスタートしたフジテレビのヤングシナリオ大賞だ。自称35歳以下を公募の条件としたこの賞は、小手先のテクニックよりも若者だからこそ書ける瑞々しい台詞や、時代にマッチした新しい感性が求められた。
第1回受賞者は当時19歳だった坂元裕二。翌1988年の受賞者は当時25歳だった野島伸司で、野島は受賞してすぐに月9の恋愛ドラマ『君が嘘をついた』(フジテレビ系)に抜擢される。デビュー仕立ての新人が、民放プライムタイムのドラマを全話執筆するということ自体、今となっては夢物語のようだが、経験がなくても可能性があると思えば抜擢し、若いプロデューサーと二人三脚で作っていく体制があったからこそ、新人脚本家が育つ環境がテレビドラマにはあった。
もちろんそこには厳しい競争原理も働いている。『書けないッ!?』のように脚本は何度も直され、ダメだと判断されれば、後に控える脚本家と交代。身も蓋もない言い方をするのなら、若手脚本家だからこそ、プロデューサーも容赦なく(脚本に)ダメ出しができる。