『カムカムエヴリバディ』に恋の季節到来? るいとジョーの頬が触れ合う距離
地蔵盆の日以来、るい(深津絵里)と錠一郎(オダギリジョー)の関係は、レコードを聴いたりジャズ雑誌を借りるくらいで、これといった進展はなく、そうこうしているうちに年も明けて鯉のぼりの季節になった。
<命短し 恋せよ乙女>。大正から昭和にかけて流行した「ゴンドラの唄」の一節だ。『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)第49話では、“恋する乙女”ベリー(市川実日子)がジャズ喫茶「Night and Day」のカウンターで嘆く。ついさっき、錠一郎を映画に誘って断られたばかりだった。「水族館も遊園地もどこ誘てもあかん。どないしたらデートしてくれんの、ジョーは?」。木暮(近藤芳正)に控えめな態度を取ることを提案されたことは、かえって火に油を注ぐ結果となり、怒りの矛先は同性に向けられる。
「そういう女、一番嫌い! 『私は興味ありません。ほしい思てません』。そんな顔した女に限って、気い付いたら何もかも手に入れてんねん」。そこにクリーニングを抱えたるいがやって来る。よほど虫の居所が悪かったのか、るいに難癖をつけるベリー。「それや、その態度や」。「控えめの皮をかぶった強欲の塊や。けどな、そんなしたたかな女に、私は負けへん」。一方的に宣戦布告すると、店を後にした。
「ゴンドラの唄」2番の歌詞は<いざ燃ゆる頬を 君が頬に>と続く。洗濯物を届けに上がると、錠一郎はちょうどトランペットの練習中だった。ひとしきり音楽の話をして、ふと思い立ったように「吹いてみる?」。マウスピースを交換し、トランペットをかまえるるいに、手ほどきをする錠一郎。互いの吐息がかかる頬と頬の触れ合いそうな距離に、先に耐えられなくなったのはるいの方だった。「配達行かんと」と言って部屋を飛び出し、そのまま階段を駆け下りた。