オダギリジョーは“正解”を出してくれる 『カムカム』演出に聞く、るい編キャストの魅力
1月3日から放送が再開という近年の朝ドラの中ではもっとも早い年明けのスタートとなった『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)。第8週第39話から2代目ヒロイン・るい(深津絵里)編の物語が始まり、安子(上白石萌音)編とはまた違う魅力の物語が展開されている。
演出の一人、泉並敬眞は、るい編を「青春ドラマ」として捉えていたと語る。
「るい編は、映画に例えるなら『アメリカン・グラフィティ』(1973年公開のアメリカ映画で監督はジョージ・ルーカス。1960年代のカリフォルニアを舞台に、高校を卒業した男女の最後の一夜を描いた青春ドラマ)のようなイメージです。安子編の終盤は心がざらつくような展開だったこともあり、るい編ではそのざらつきを溶かしていくような、ある種の穏やかなるいの恋模様をじっくり見せていく形にできればとイメージしていました。ジョー(オダギリジョー)、ベリー(市川実日子)、トミー(早乙女太一)と、少し特殊なキャラクターたちが登場しましたが、視聴者の皆さんに彼らのことを好きになってもらえるような形にできればと考えていました」
第10週の演出を手掛けた松岡一史は、早乙女太一と市川実日子の生み出す絶妙な空気感を称える。
「早乙女さんは台本に書かれていたトミーを見事に体現してくれています。かなりの“格好つけ”のキャラクターであり、やりすぎると破綻してしまうようなキャラクターなんですが、決して嫌味にはならない。絶妙な塩梅で演じてくれています。市川さんが演じるベリーは、形としてはるいの恋敵ではあるのですが、決して嫌な女性にはならずに思わず彼女のことも応援したくなるキャラクターにしてくださっています。今後、ベリーのるいへの接し方も少しずつ変化していくのですが、2人の心の距離感の変化を市川さんは巧みに演じてくれています」
そして、「宇宙人」「ジョー」「大月錠一郎」と、異例のクレジット変更があったのがオダギリジョーだ。るいの心の奥に触れていくジョーとして、これ以上ないほどのハマりぶりを見せてくれている。演出の泉並と松岡も、その存在感は「唯一無二」と述べている。
「るいの呼び名『サッチモちゃん』ひとつとっても本当に“正解”を出してくれる俳優さんで、いろんな部分でジョーを的確に成立させてくれています。こちらも安心して身を委ねられる。オダギリさん自身も監督を務めていらっしゃるので、これでいいのかとこちらもヒヤヒヤしている部分もあります(笑)」(松岡)
「オダギリさんがしゃべるだけで、その場がほわっとするんです。ジョーのセリフを文字として見たら、日常会話ではないようなことも結構多いんですよ。それでも、オダギリさんがしゃべると不思議と成立してしまうというか。ケチャップをシャツに毎回こぼすのも正直意味がわからないですよね(笑)。でも、オダギリさんが演じるとそれも納得してしまう説得力がある。トランペットも本当によく練習していただいて指の動きも完璧なんです。誠実かつ面白さもあって、こちらが予想だにできない芝居を見せてくれる。本当に魅力的な俳優さんです」(泉並)