2021年の年間ベスト企画
加藤よしきの「2021年 年間ベスト映画TOP10」 度重なる手のひら返しで手首がグニャグニャに
5位の『整形水』は韓国のWebマンガのアニメ版です。作画の弱点を補って余りある、ストーリーの牽引力に圧倒されました。明後日の方向に転がっていく物語がたまりません。なんというか「こんな感じでやっていいんだ!」と自由を感じたというか、勇気が出ました。
4位『シャン・チー/テン・リングスの伝説』はMCUの新作です。予告を観た時は正直「うーむ、地味だな」と渋い顔になったのですが、蓋を開けてみるとアラびっくり。笑いあり涙ありの傑作でした。MCUの単独作品では過去最高に好きですね。オークワフィナには今年のベスト女優賞をあげたいです。
続く3位『KCIA 南山の部長たち』は韓国からやってきました実録政治ものです。私はイ・ビョンホンが酷い目に遭うのを観るのが好きなのですが、この映画はその点から言って傑作でした。ずっとビョンホンが政治と人間関係で悩みまくって、とうとうブチギレるまでをじっくり描いてくれます。そして「ここしかない!」という最高のタイミングでイ・ビョンホンが凄い勢いでズッコケてくれて、この瞬間に「今年のベスト1は決まりだ!」と確信しました。
そんな確信を上塗りしたのが2位の『マリグナント 狂暴な悪夢』。冒頭の『野望の王国』みたいな劇画調の病院から「なんか変な映画が始まったぞ」感はありましたが、終盤からのジェットコースター感たるや。殺人鬼ガブリエルが現れてからの怒涛の展開で「今年のベスト1はこっちだ!」と手のひらが高速回転したものです。
こうした度重なる超高速の手のひら返しによって、私の手首はグニャグニャになっていたのですが、師走になってさらにもう一回転させることになります。それが1位の『レイジング・ファイア』。ドニー・イェンとニコラス・ツェーW主演によるアクション大作です。現在の香港はいろいろな面で正直かなり厳しい状態です。そんな中にあって、本作は「面白ければ何でもイイんじゃ!」という香港映画マインドが景気よく大爆発。これぞ香港アクションとしか言いようがありません。子どもの頃から香港映画を愛してきた人間として、香港に自由が戻ることを祈りつつ、本作を今年のベスト1にしたいと思います。何なら『レイジング・ファイア』は今も上映中なので、是非とも観てやってください。
そんなわけで、今年のベスト10でございました。来年も来年で話題作がたくさん控えているので、また手のひらがグニャグニャになることを祈りつつ、引き続き頑張っていこうと思います。
■公開情報
『レイジング・ファイア』
TOHOシネマズ 日比谷ほかにて公開中
監督・脚本・プロデュース:ベニー・チャン
主演・アクション監督・プロデューサー:ドニー・イェン
主演:ニコラス・ツェー、チン・ラン
スタント・コーディネーター:谷垣健治
配給:ギャガ
原題:怒火・重案/2021/香港・中国/カラー/シネスコ/5.1ch/126分/字幕翻訳:鈴木真理子/PG12
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