『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』は愛と誠実さに溢れた傑作 人間ドラマにも注目

『ワイスピ/ジェットブレイク』の愛と誠実さ

 “悪い連中が悪いことを考えているから、いつもの仲間でシメに行こうぜ!”。本作『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』(2021年)は、現代と回想が入り組み、世界中を飛び回る複雑なプロットの作品だが、それはそれとして、この一行で説明できてしまうのが『ワイルド・スピード』シリーズ(2001年~)の面白さである。

 『ワイルド・スピード』こと通称『ワイスピ』。このシリーズほどファンに支えられた作品はないだろう。1作目はアメリカの暴走族をテーマにした中規模程度の予算の青春ものだったが、根強い人気でシリーズ化され、4作目の『ワイルド・スピード MAX』(2009年)、そして5作目の『ワイルド・スピード MEGA MAX』(2011年)で確変が起きてド派手なアクションになり、『ワイルド・スピード EURO MISSION』(2013年)と『ワイルド・スピード SKY MISSION』(2015年)からは完全なスパイもの&ドル箱シリーズになった。変わったものはジャンルや予算だけではない。主役格であるブライアン役のポール・ウォーカーの事故死や、シリーズの人気爆熱に一役買ったドウェイン・ジョンソンの離脱など、色々なトラブルもあった。制作会社の「これは商売になるぞぉぉぉ!!」という思惑が前に出過ぎた感も否めない。その結果として人気キャラクターであるハン(サン・カン)の死があまりに雑に処理されたために、ファンの間で「#JusticeForHan(ハンに正義を)」というハッシュタグが作られ、抗議活動も起きた。そして……やっぱ「#JusticeForHan(ハンに正義を)」と声を上げてみるもんである。本作はこれまでの全てのゴタゴタをリセットしつつ、『ワイスピ』を支えたファンの心を汲み取り、なおかつできる限り一見さんにも楽しめるように作られた、最高の暑中見舞いに仕上がっている。これはひとえに、シリーズ再興の立役者、ジャスティン・リン監督の采配によるものだろう。

 まずアクションだが、これはもう100点満点である。ここ数年のカーアクションの基準となった2本の金字塔『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015年)と『フォードvsフェラーリ』(2019年)を踏まえたうえで、これらを超えようと壮絶なアクションが炸裂。冒頭で『フォード~』を踏まえたようなカーレースと、『マッドマックス』な爆発しまくりのカーチェイスを持ってきているのは、明確な所信表明だ。早々に金字塔的2作へのアンサーを済ませたところで、女性陣の格闘アクションに、ヴィン・ディーゼル演じるドムの肉弾大暴れ、そして大御所ヘレン・ミレンが華麗にロンドンの街中を大暴走(峰不二子がおばあちゃんになったら、きっとこうなるのだろう)。さらに予告でも散々に推されているスーパー磁石を使ったアクロバットな大破壊アクションで『ワイスピ』らしさもしっかり見せてくる。

 しかし、本作で注目したいのは過去最高に濃密な人間ドラマだ。ドムの知られざる過去と、弟であるジェイコブ(ジョン・シナ)の確執を軸に、新たなドラマがしっかりと描かれていく。まるでリン監督の「尺を長めに割いてでも、シリーズを支えてくれたファンのために、仁義を通し、キャラクターを再定義・再構築するんだ」という声が聞こえてくるようだ。本作で最も胸を打つのは、こうしたリン監督の作品に対する誠実さだ。そして、その「誠実さ」は本編のクライマックスに素晴らしい形で現れる。



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