藤津亮太の「2021年 年間ベストアニメTOP10」 キーワードは音楽、仕事と私、ロボットアニメ

藤津亮太の「2021年ベストアニメ10」

 リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2021年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、アニメの4つのカテゴリーに分け、アニメの場合は、2021年に日本で劇場公開・放送・配信されたアニメーションから、執筆者が独自の観点で10作品をセレクトする。第9回の選者は、アニメ評論家の藤津亮太。(編集部)

・『竜とそばかすの姫』
・『アイの歌声を聴かせて』
・『Sonny Boy -サニーボーイ-』
・『オッドタクシー』
・『白い砂のアクアトープ』
・『フラ・フラダンス』
・『映画大好きポンポさん』
・『シン・エヴァンゲリオン劇場版』
・『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』
・『EUREKA/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』
※順不同

 2021年の印象に残った作品を紹介するにあたり、3つのキーワードをもとに選んだ。『劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト』など、10本の縛りの中に入り切らない力作も多かった。

音楽

『竜とそばかすの姫』(c)2021 スタジオ地図

 最初のキーワードは「音楽」。『竜とそばかすの姫』と『アイの歌声を聴かせて』はともに、歌を通じて関係性を築いていく登場人物の姿を描き出した。『竜とそばかすの姫』はネット世界でのアバター、『アイの歌声を聴かせて』はAIが入った人間そっくりのロボットボディと、どちらも身体性の問題に触れているのも興味深い。

 続く『Sonny Boy』と『オッドタクシー』は、どちらも野心的なオリジナル企画で、ほかに類例のない作品だった。『Sonny Boy』は音楽を使う局面をストイックに絞り込み、その分、その回で流れる楽曲の印象を鮮烈にした。第1話で「少年少女」(銀杏BOYZ)の流れるラストは特に印象深い。『オッドタクシー』はHIPHOPレーベル・SUMMITが全面的にコミットし、動物キャラクターの犯罪ものという独自のジャンルを印象深いものにした。『Sonny Boy』『オッドタクシー』ともに音楽を使って、そのオリジナルな世界観を強く印象づけることに成功していた。

仕事と私

『映画大好きポンポさん』(C)2020 杉谷庄吾【人間プラモ】/KADOKAWA/映画大好きポンポさん製作委員会

 2つめのキーワードは「仕事と私」。それぞれ『白い砂のアクアトープ』は水族館スタッフ、『フラ・フラダンス』はスパリゾートハワイアンズのフラガール、『映画大好きポンポさん』は映画監督を題材にしている。

 『フラ・フラダンス』は新人フラ・ガールの試行錯誤の日々を優しい眼差しで点描していく。一方『映画大好きポンポさん』は、編集作業を通じてクリエイティブの深淵と厳しさを描いた。仕事の持つ「社会との接点」と「自らの生き方」というそれぞれの側面にスポットがあてた2作に対し、その両面を持ち込んだのが『白い砂のアクアトープ』で、「ゆりかごの中の夢」を描いた第1クールから、その外に出た後の「夢」のあり方を問う第2クールへの転換が「仕事と私」というテーマを深堀りしていた。

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