『恋慕』から『マイネーム』まで 2021年に活躍した韓ドラヒロインを振り返る
『マイネーム:偽りと復讐』解放されるハン・ソヒ
今作の主人公ユン・ジウも、原動力は殺された父の復讐だ。父の親友でもあった麻薬組織のボス、チェ・ムジン(パク・ヒスン)の庇護のもとで警察に潜入したジウは、復讐相手を探すべく刑事オ・ヘジンとして二重生活を送る。麻薬取締班に配属されたことで父の復讐相手にも近づいていくが、それは恩人であるムジンを追うことも意味していた。
子どもの頃から孤立無縁だったジウは、ムジンが運営する地下格闘技場でもたった1人の女性。あるとき性暴力に遭ったことでますます誰も信じられなくなり(ムジン以外は)、さらにストイックに身体を鍛え、腕を上げていく。彼女は父の遺骨入れだろうが、シャワーヘッドだろうが、ジョン・ウィックばりに身近にあるものは何でも武器にし、闘うことで自衛しながら自分を責めている。傷だらけになりながら「本当の名前」を見つけていく彼女の旅路は、呪縛からの“解放”でもあった。
そんなジウ/ヘジンを演じたのが、『わかっていても』のセンシティブな美大生とはまるで別人のようなハン・ソヒ。今作ではノワール・アクションに挑むべく、『夫婦の世界』撮了後から体重を10kg増量し、フィジカルトレーニングにも時間をかけたという。その劇的な変貌が今作に大きな説得力をもたらしたことは間違いない。
『海街チャチャチャ』本当の自分に出会うシン・ミナ
自分はひとりで生きてきたし、ひとりで何でもできると信じてきた自立した女性が、海辺の小さな町での出会いによって、もっと素直に、もっと気楽に生きられるようになるヒューマン・ラブコメディ。亡き母との思い出が残るその町コンジンで、ソウルからきた歯科医ユン・ヘジンが、何でも屋をしているホン班長ことホン・ドゥシク(キム・ソンホ)と恋に落ちる。
華やかで都会的なヘジンは、その性格や態度から最初は誤解を受けることになるが、回を重ねるごとに完璧主義の裏側にある孤独や、愛情に飢えた寂しがり屋の部分、情の深さが見えてきて、ホン班長との温かな恋を応援したくなる。『補佐官』シリーズ以外では、『アラン使道伝』『オー・マイ・ビーナス』など多くのラブコメで活躍してきたシン・ミナは港町に映えるファッションでも注目を集めたが、劇中のヘジンは少しずつ虚勢を捨てていく姿が眩しかった。また、コンジンに暮らす人々と日々築いていった友情は、五臓六腑に染みわたる海鮮スープのごとく格別。
『恋慕』王子として生きるパク・ウンビン
韓国時代劇の王宮において双子は忌むべきもの。それが男の子と女の子だった場合、女の子には死の運命しかない。だが、今作では命を救われた女の子タミが、亡き兄に代わって男装し、王位継承者イ・フィとして生きる運命を背負う。初恋の相手ジウン(ロウン)と再会しても、その思いを伝えることは許されない……。
女性として生きる道を失い、女性であるという秘密と極限の緊張を常に抱えながら、王となるべく生きねばならない彼女の人生はあまりに過酷。また、自分の身内を相手に政治的陰謀を暴くことにもなる。亡き母・王妃の「たくましく生き抜いて」の言葉のとおりに、文武両道を修め、周囲を寄せ付けない威厳を放つイ・フィはときに無礼極まりない王族や高官たちを諫めながら、もう1つの人生かもしれなかった身分の低い女性たちへの侮辱を決して見て見ぬふりしない。
そんなフィを演じるパク・ウンビンの凜々しさと、ジウンとの初々しいやりとりや純粋な感情表現のギャップが心を捉えて離さない。子役から活躍し、『ストーブリーグ』でも唯一の女性チーム長役で注目を集めたパク・ウンビンは、傑作アクション映画『The Witch/魔女』の続編も控えており、これからますますグローバル人気を集めそうだ。
今年も多くの女優たちの新しい作品、新しい表情に出会えた。2022年はどんな女性たちが韓国ドラマで活躍するのか、今から楽しみだ。
■配信情報
『マイネーム:偽りと復讐』
Netflixにて全話独占配信中