『恋です!』ユキコ×森生のこれまでを辿る なぜ2人の恋愛は愛おしいのか

『恋です!』ユキコ×森生のこれまでを辿る

 「恋です!」と便箋いっぱいにおっきな文字で書かれたラブレターは“周囲に迷惑をかけまい”と恋愛にも慎重になり頑なだったユキコの心を溶かし、森生に会いたいという気持ちが彼女を初めて一人バスに乗せ、そして初の一人ショッピングへと誘う。森生への想いがユキコを随分遠くまで、そして自由な世界に一気に連れ出す。これまで当然のごとく諦めてきたあれこれに対しても、ユキコのことを特別視しない森生の態度と事もなげに問いかける「え、何でですか?」の一言が、一緒に乗り越える“きっかけ”を与えくれ、背中を押してくれるのだ。「好きなだけ転んでいいっすよ」という言葉と一緒にプレゼントしてくれた真っ赤なハイヒール、森生と対等になりたいと始めたユキコのバイト先に駆けつけ大声でかける心からのエール……その全てに他意なく遠慮もないからこそ、ユキコも同じように遠慮せずどんどん自分の欲しいものに手を伸ばせるようになるのだ。

 それはもちろん森生にとってもそうだ。森生も、ユキコにふさわしい存在になろうと、これまで拒み続けられた“社会”と“世間”と、もう一度向き合う決意をし、何度面接で断られても嫌な思いをしようともなんとか仕事にありつくことができる。その過程で、ユキコや仲間以外にも自分の働きぶりや本質に目を向けてくれる人がいることを知り、自身の居場所を少しずつ獲得していく。こんなに優しくて愛情いっぱいの素晴らしい森生が「見てくれている人は見てくれている」という当たり前の事実を実感できるようになるまでにこんなにも時間を要してしまう社会が恨めしく思えるほどだが、ようやく彼への風向きも変わったのだ。

 切ないのは、“生かし生かされてきた”ユキコと森生が互いに良い影響を及ぼし合った先に待ち受けていたのが、今回の別れだったことだ。ユキコは森生にせっかく舞い込んだ正社員登用の話を自分のせいで断ってほしくないと思うし、森生はそれでもなおユキコに必要とされる自分でいたいと願い、緋山(小関裕太)の存在も相まってただただ彼女の近くにいることを優先したいと考える。交わらない2人の想いは互いを「近くにいるのに遠い」と感じさせてしまう……あぁなんて切ないのだろう。お互いを誰よりも一番に考え想い合っているからこその別れには、観ているこちらも身を裂かれるような想いがした。

 最終話では1年後の2人が描かれるようだが、この別れが彼らにどんな影響を与えたのか。「どれでもどれもが正解だ」とはわかっているが、どうかどうか好き合うユキコと森生が、2人らしい方法で一緒にいられますように。大好きな2人がとびっきり笑っている未来が待っていますように。

■放送情報
『恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00〜放送
出演:杉咲花、杉野遥亮、鈴木伸之、奈緒、岸谷五朗、田辺桃子、細田佳央太、戸塚純貴、ファーストサマーウイカ、堀夏喜(FANTASTICS from EXILE TRIBE)、生見愛瑠
原作:『ヤンキー君と白杖ガール』(うおやま/KADOKAWA)
脚本:松田裕子
演出:内田秀実、狩山俊輔
チーフプロデューサー:加藤正俊
プロデューサー:森雅弘、小田玲奈、鈴木香織(AX-ON)
主題歌:「こたえあわせ」JUJU(ソニー・ミュージックレーベルズ)
(c)日本テレビ

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる