『青天を衝け』泉澤祐希「僕“も”逃げたい!」の圧倒的な演技 栄一を救う慶喜の眼差しも
栄一を死の淵から救ったのは、慶喜の「そなただけは、どうか、尽未来際……生きてくれ。生きてくれたら、なんでも話そう」という心からの言葉だった。かつて幕臣として仕えた主君からの「そなたともっと話がしたいのだ」という願い。慶喜の優しきその眼差しに、栄一の瞳にみるみるとエネルギーが宿っていく。
そして、慶喜は約束通り栄一が切望していた『徳川慶喜公伝』の編纂に協力する。つまり、それは慶喜の口から鳥羽・伏見の戦いの真実が明かされるということでもあった。半狂乱。幕臣たちが「薩摩を討つべし!」と声を上げる状況を慶喜はそう例える。
「人は誰がなにを言おうと戦争をしたくなれば必ずするのだ。欲望は道徳や倫理よりずっと強い。ひとたび敵と思えばいくらでも憎み、残酷にもなれる。人は好むと好まざるとにかかわらず、その力に引かれ、栄光か破滅か運命の導くままに引きずられていく」
慶喜が話すその真理は、今の令和の時代にも響く言葉だ。現代では欲望渦巻くネット、SNSがその主戦場だ。慶喜は後悔の念から自分が戦の火種にならぬよう、光を消して余生を送ってきた。慶喜の覚悟の強さが、篤二に突き刺さる。慶喜にとって隠遁生活を送ることが、最後の役割だった──その考えに栄一は自分が今、日本のために果たすべき役割を見出そうとする。栄一が出した答えは実業界からの引退。
最後の変身は終わっても、まだまだ栄一は日本のために邁進する。第40回「栄一、海を越えて」では、実業界から引退した栄一が民間外交に力を注いでいく。さらに、この「実業<論語>編」において最重要人物とも言える、栄一の孫・敬三(笠松将)が本格登場する。
■放送情報
大河ドラマ『青天を衝け』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアムにて、毎週日曜18:00~放送
BS4Kにて、毎週日曜9:00~放送
出演:吉沢亮、小林薫、和久井映見、村川絵梨、藤野涼子、高良健吾、成海璃子、田辺誠一、満島真之介、岡田健史、橋本愛、平泉成、朝加真由美、竹中直人、渡辺いっけい、津田寛治、草なぎ剛、堤真一、木村佳乃、平田満、玉木宏ほか
作:大森美香
制作統括:菓子浩、福岡利武
演出:黒崎博、村橋直樹、渡辺哲也、田中健二
音楽:佐藤直紀
プロデューサー:板垣麻衣子
広報プロデューサー:藤原敬久
写真提供=NHK