『あなたの番です』SPで劇場版を“予習” ドラマ版とパラレルワールドの違いを分析

『あなたの番です』SPで劇場版を“予習”

 12月10日に封切られた『あなたの番です 劇場版』で描かれるのは、交換殺人ゲームが始まらなかった“もしもの世界”。菜奈(原田知世)と翔太(田中圭)の結婚パーティーが行われる豪華クルーズ船を舞台に、新たな殺人劇が始まるのである。その番宣として12月10日に日本テレビ『金曜ロードショー』枠で放送された『劇場版公開記念!『あなたの番です』完全新撮スペシャル!!』は、劇場版に向けた“予習”であり、同時にドラマ視聴者が劇場版に抱くいくつかの疑問を解消してくれる5つの短編ストーリーが展開した。

 舞台が一種のパラレルワールドに行く以上、ドラマ版の第10話で殺された菜奈をはじめ、死亡しているキャラクターたちも何事もなかったかのように登場する劇場版。その一方で、劇中には“交換殺人ゲーム”が起きなければ登場し得なかったキャラクターというのも少なからずいる。ドラマ版を基準に考えれば、床島(竹中直人)の代わりに管理人となった蓬田(前原滉)であったり、502号室の赤池一家の事件後に越してくる南(田中哲司)、そして北川(真飛聖)が引っ越したため、304号室に(事故物件として家賃が安いという理由で)入居する二階堂(横浜流星)が主なところだ。

 とはいえ劇場版のホームページの相関図を見れば、蓬田はカメラマンとして奇妙な縁でキウンクエ蔵前の住人たちと再び関わり、南はパラレルワールドでも変えようがない黒島(西野七瀬)の過去に関わる人物として同じ船に乗り込んでいることがわかる。となれば、二階堂がどのように黒島と接点を持つのかという部分が、もはやストーリーの辻褄を抜きにしても気になるポイントであろう。今回放送された新撮ドラマの3編目で、その部分につながる2人の関係性が描かれていた。大学で偶然すれ違い、黒島のハンカチを拾ったものの2年間返せないでいる二階堂。その陰キャぶりと人間嫌いはドラマ版よりも増しており、黒島の方もドラマ版では田宮(生瀬勝久)によって殺される波止(水石亜飛夢)に自ら手を下すのである。

 二階堂と黒島が、交際に発展した状態で劇場版の物語がスタートするというのは、ドラマ版視聴者にとってはなかなか感慨深いものがある。道筋は違えども、2人は出会う運命にあるというパラレルワールドの魅力がここで活かされているとも感じてしまう。また同じように映画への関わり方が気になる登場人物であった菜奈の元夫・細川(野間口徹)や、402号室の榎本早苗(木村多江)と榎本正志(阪田マサノブ)夫妻が隠していた息子の総一(荒木飛羽)についても今回の新撮ドラマで描かれた。前者は菜奈との離婚届に判を捺しつつ、翔太との友情は継続し未練を語る。後者はドラマ版と同じように黒島と出会いサイコパス同士で心を通わす総一の姿に不穏さがにじみ出ているものの、早苗が自ら菜奈に打ち明けたことで彼女の狂気へとつながる闇が和らいだようにも見える。

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