“加瀬さんコール”が鳴り止まない! 『最愛』でアップデートされた“最新版”の井浦新
「加瀬さん! 加瀬さん! 加瀬さん!」ーーいま、あちこちで“加瀬さんコール”が鳴り止まない。
好評放送中のドラマ『最愛』(TBS系)において、井浦新が演じる“加瀬さん”が話題である。今シーズン大きな注目を集め、毎話放送が終了するごとに多くの反響を呼ぶ本作と比例するように、この加瀬さんへの注目度も上がっている。演じる井浦は本作で、また新たなフェーズに入ったように思うのだが、いかがだろうか。
現在と過去とが交差する構成で進んでいく『最愛』は、愛情と疑念と葛藤と憎悪とが渦巻く、先の読めないサスペンス・ラブストーリーだ。とある連続殺人事件の重要参考人となった実業家の女性と、彼女の動向を追う男性刑事、身を挺して彼女をサポートする男性弁護士の3者を中心に物語は展開。製薬会社で新薬の開発に悪戦苦闘しながら、殺人事件の関係者として疑いの目を向けられる主人公・梨央に吉高由里子が扮し、梨央のかつての初恋の相手でありながら、刑事として彼女に迫らなければならない現状に葛藤する大輝を松下洸平が演じている。そして、大輝や愛する家族と悲劇的に離れ離れになった梨央のことを15年にわたって支え、フォローしてきた弁護士が、井浦演じる“加瀬さん”なのである。
加瀬さんの行動原理は明快だ。元々は、梨央の母・梓(薬師丸ひろ子)が社長を務める「真田ホールディングス」の弁護士であり、“番犬”として、明晰な頭脳と行動力とで会社や真田家を守ってきた。梨央のサポートについたのは梓の指示であり、そのために身を粉にするのは当然のことだ。しかし、彼の言動には複雑さが加わってきた。15年もの間、彼は梨央に寄り添い、ともに過ごしてきたのである。さまざまな“情”が芽生えたとしても、何ら不思議ではない。演じる井浦はこの“情”というものを、胆大心小な演技で示していると思う。物語の中心に立つ3人のうち、もっとも外面的な変化が浅いのは加瀬さんだ。梨央は快活な女子高生からクールな女社長となり、大輝は陸上ひと筋の大学生から刑事となった。その変化は明らかだ。一方の加瀬さんは、変わらず穏やかな弁護士である。だが、梨央に対する心の距離には大きな変化が生じた。その眼差しや頬の微細な動きは見逃せないし、発する声はときに荒々しくなることもある。こうした内面の変化の深さが垣間見えるからこそ、私たち視聴者は加瀬さんから目が離せないのである。