上白石萌音の恐怖すら感じるうつろな目の演技 『カムカム』再びの“どん底”の金曜日
どん底。『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)第5週「1946-1948」のラストを観て、そう思った。
物語の構成上、朝ドラは週のラストとなる金曜日に劇的な出来事が起こることが多い。例えば、第3週ラストは安子(上白石萌音)と稔(松村北斗)が結ばれた幸せな15分間、一転して第4週ラストでは稔の訃報が伝えられる安子の無音の中の叫びが描かれた。「結婚」「夫の死」と来て、展開として次は安子にせめてもの幸せをと祈るように観ていたが、「バイク事故に遭う」というさらなるどん底が待ち受けているなんて。
自転車を漕ぐ安子の目はぼーっと遠くを見つめている。安子は酷く疲れていた。大口契約を掴み、おはぎを自転車で走れる範囲で売り回っていたからだ。その売り方は千吉(段田安則)の言う薄利多売。るい(中野翠咲)との大切な時間であった「カムカム英語」すら聞く余裕がないほどの多忙さ。安子本人もいずれ身体にガタが来ることは分かっていたはずだ。しかし、それでもと自分を鼓舞させるのは「どれだけつらくても顔を上げて、前を見て、ひなたの道を歩いていく」という姿をるいに見せていくと岡山を出たあの日の汽車の中で誓ったからだ。
地面に落ちた下駄とおはぎ。ぐてっと横たわる安子。るいの泣き声で安子はハッと我に帰り、折れた左腕に激痛が。るいに近寄ると額には一生ものの傷痕が残っていた。疲弊した安子が右腕だけでるいを担ぎ、無我夢中で病院に向かおうとするシーンからの暗転。