『カムカムエヴリバディ』空襲で安子の実家は被災 戦争が母と娘の物語にもたらす断絶

『カムカム』戦争がもたらす断絶

 寝静まった街に突如、轟音が鳴り響く。昭和20年6月29日未明、B29の編隊が岡山市に飛来し、無差別爆撃を行った。『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)第17話は岡山空襲を描く。

 るいを連れて実家のたちばなを訪れた安子(上白石萌音)を、小しず(西田尚美)とひさ(鷲尾真知子)が迎える。ひさは手作りのお汁粉をるいの口に含ませ、小しずは安子が生まれた時のことを話しはじめる。殺伐とした戦時下で自然と笑顔がこぼれる家族の風景だ。3世代のヒロインが登場する本作は、母と娘の物語である。言うまでもなく安子たちの前にはひさや小しずがいて、もう一つの『カムカムエヴリバディ』があったことは想像に難くない。

 母と娘がいれば、父と息子の物語もある。荒物屋あかにしの吉兵衛(堀部圭亮)は疎開する人の家財道具を二束三文で買い叩くが、一人息子の吉右衛門(石坂大志)に「お父ちゃんなんかじゃねえ。あこぎなケチ兵衛じゃ!」と言われてしまう。すべては吉右衛門のためなのに、気の毒な吉兵衛……。

 そんな悲喜こもごものエピソードを戦争は容赦なく奪っていく。事前の警戒警報はなく、迎撃をする間もないまま終わった空襲の死者は1737人、岡山市は市街地の7割が壊滅する被害を受けた。爆発音で飛び起きた安子は、雉真家の人々と防空壕で身を寄せ合う。一夜明けて目にしたのは、変わり果てた街の光景。商店街には建物の残骸が積まれ、がれきの中にかろうじてあかにしの看板が見えた。

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