『アナと雪の女王2』は洗練されたエンタメ作 気候変動に対する重要なメッセージも
世界中の人々を夢中にしたディズニーアニメの続編『アナと雪の女王2』が11月19日、ついに地上波で初放送される。
アナとエルサが真実の姉妹愛を取り戻し、アレンデールの街に平和が訪れた前作のラストから3年後。再びアレンデールを襲う異常気象から国民を救うため、一行は未知なる大冒険へと旅立つーー。それが今作『アナと雪の女王2』のあらすじだ。
“王子様に選ばれてこそ女性は幸せになれる’’という古典的な価値観を捨て去り、自らの力で幸せを勝ち取る女性を描き従来のディズニー作品の殻を打ち破った前作。その物語は世界中で共感を呼び、素晴らしい音楽も相まって『アナと雪の女王』は多くの人に愛される作品となった。
そんな前作が“姉妹愛’’という不変のものを描いていたのに対し、今作が描くのは“変化’’だ。人生は時に良い方向にも悪い方向にも変化していくのが世の常というもの。観客と同様に成長したアナやエルサにも様々な変化が訪れ、時に運命に抗い受け入れながら人として成熟していく。“姉妹愛’’のような変わらないものを大切にしながら変化にどう向き合いどう受け入れていくか、前作から約6年経ち数多の変化を迎えた子どもたちに本作は教えてくれる。まさに前作と対になるような作風で、本作をもって『アナと雪の女王』は真に完成したとも言えるだろう。
大人気作品の続編ということで、本作には至る所にディズニーの本気というものが伺える。前作同様に大勢の心を惹きつける耳馴染みの良い音楽はもちろん、ワクワクが詰まったストーリーや隠されたテーマ性も一流で、子どもの横で何気なしに観ていた親もついつい夢中になってしまうであろうクオリティなのだ。
本作の最大の見どころの一つが、ディズニーの歴史でも最高峰と断言できる映像美である。前作でも煌めく雪や光の演出で大勢を魅了した『アナ雪』だが、本作の描写はそれをさらに凌駕する。
例えば、一行が魔法の森へと向かうシークエンス。スタッフが北欧の美しい大地をめぐり着想を得たという荘厳で雄大な景色の数々はまるで絵画のように壮大かつ緻密で美しく、観ている我々も旅に出ているかのような高揚感を与えてくれる。そして特筆すべきは、本作の舞台である魔法の森を守る精霊の一人、馬の姿をした水の精霊ノックのビジュアルだ。水で出来たノックの身体は神秘的に透き通り、輝く立髪や尾を神秘的に滴らせながら大海原を走りまわる。その猛々しく神々しい姿は息を呑むほどに美しく、劇場公開直後も「ノックが凄かった!」と大評判だった。本作を鑑賞する際には是非その芸術性の高い映像に注目していただきたい。
上述の通り本作は「変化」をテーマとして掲げているが、その裏で時代を映す非常に重要なメッセージを放っている。今作でエルサが冒険に旅立つ契機となるのがアレンデールを襲う異常気象なのだが、中盤でこの異常気象はエルサたちの祖父母世代が犯したある罪によって引き起こされたことが明らかとなる。今を生きる若者が、親世代やその上の世代が犯した過ちを正すために行動を起こす、というのが本作のプロットなのだ。
この物語は今世界各地で猛威を振るい、あらゆる生命を脅かしている気候変動を映し出している。豊かな文明の代償として生じてしまった様々な環境破壊や異常気象。このままでは犠牲となるのは本作を観て楽しんでいる子どもたちや、さらにその次の世代である。アナとエルサが祖父母世代の贖罪で危険に晒されたように、気候変動がこのままのスピードで続くと未来ある若者に大人たちの罪を背負わせてしまうことになる。