『カムカムエヴリバディ』濱田岳、松村北斗、村上虹郎、戦争の理不尽さを体現
何気ない日常も、夢も、大切な人も、国民から多くのものを奪っていった戦争。先の見えない時代の中では、好きな人と日向の道を歩みたいという平凡な願いすら叶えられなかった。
『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)第13話。失恋の痛みがまだ言えない安子(上白石萌音)のもとに、また一つの苦々しい報せが届く。大好きな兄・算太(濱田岳)の出征が決まったのだ。
借金取りに追われ、しばらく行方をくらませていた算太が入隊のために岡山へ帰ってきた。お調子者な性格は変わらず、「まだ親父は怒っとるんか」と笑う算太だったが、またその態度が金太(甲本雅裕)を意固地にさせる。戦争に行くということは、命を落とすかもしれないということ。もう二度と会えないかもしれないということ。
「せめて晩ご飯くらい一緒に」と小しず(西田尚美)は訴えるが、金太は最後まで風来坊の息子を受け入れなかった。たった一人、部屋で出征の日を迎える算太のために涙を流しながらおにぎりを握る小しずの姿が辛い。母の家族への愛情も虚しく、結局父と息子は分かり合えないまま別れた。どうか無事に、と願わずにはいられない。
また菓子職人にも次々と召集令状が届き、人手も材料も足りなくなった「たちばな」は商いを縮小せざるを得なくなった。一方、様々な衣料品を軍に納入するため、工場を拡張した「雉真繊維」。この状況を見越し、ぬくぬくと育ってきた稔(松村北斗)に商いの難しさを説いた千吉(段田安則)の判断は正しかったと言える。さすがは一代で会社を築き上げた地元の有力者だけある。