松本潤、俳優としての次のフェーズへ 主演作『99.9』、大河ドラマでさらなる挑戦
演者でありながら、作り手でもある。そのハイブリッドな視点は、役作りそのものにも影響する。その作品の中で、そのシーンの中で、観客となる視聴者に何を伝えるのか。そのためには、キャラクターに何が期待されているのか。そうして創り上げられる松本演じるキャラクターは、容姿こそ“松本潤”ではあるものの、『花より男子』(TBS系)の道明寺司も、『失恋ショコラティエ』(フジテレビ系)の小動爽太も、『99.9』の深山大翔も、それぞれ確立したキャラクターとしてハッキリと思い出すことができる。
それは、松本自身が俳優業をする上で最も意識している部分と言えそうだ。雑誌『MORE』(2013年11月号)の1万字インタビューで、「(アイドルと役者の両立で)ひとつだけマイナス点があるとしたら、お芝居っていうフィクションな世界に入った時にパーソナルな松本潤とか、これまでのイメージをいかに消すかっていうこと」と話していた。役者自身のパーソナルイメージが確立されていないほうが、観る人にとっては役柄と同化させやすい。しかし、ありがたいことに国民的アイドルとしての人気を誇る松本の場合は、もともとの“松本潤“のイメージが浸透している上で、物語を紡ぐ1人にならなければならない。
しかし、そのデメリットと感じられる部分も、松本にとっては「どんなアプローチをしていくか」とワクワクさせるものなのかもしれない。先の香川のインタビューで「難しい役どころである深山というキャラクターを、周りとのいい関係性の中で彼自身が面白がりながらあっという間に作り上げてしまった。非常に魅力的な主人公をね」とあったように、目の前のミッションが難しければ難しいほど挑むことを面白がれる。もしかしたら、それが様々なことにチャレンジし続けなければならないアイドルに求められる素養なのかもしれない。
ドラマ『となりのチカラ』では、失敗ばかりの男を演じるという松本。脚本・演出を手掛ける遊川和彦が「今まで見たことのない情けない男をやらせたい」と練った企画書を読んで、「おもしろいですね」と笑顔で快諾したというエピソードを聞く限り、また新たな挑戦にワクワクしていることが伝わってくる。
大河ドラマ『どうする家康』で描かれるのは、脚本家の古沢良太いわく「今さら大河ドラマでやるのがちょっと恥ずかしいくらいの超ベタな偉人」である徳川家康。だが、私たちの知る歴史上の人物像とはまた一味違った、人間臭い家康が見られるようだ。
「主演の松本潤さんは、華やかさと親しみやすさを持ち合わせ、私の描きたい主人公像“ナイーブで頼りないプリンス”にまさにピッタリ」と話すところからも、松本の新境地を切り拓く作品になるに違いない。松本の「心血を注いでみんなとモノづくりができるなら、この大きな挑戦をしてみたい」「今までとは違う新たな家康を一緒に作っていけたらと思っています」のコメントも実に力強い。
チームをまとめる情熱と冷静な作り手の視点、そして常に新しい自分を見せていくことへのチャレンジ精神。俳優・松本潤の真価をまざまざと見せつけられる日々に、驚かされたり、感動したりと、やはり我々も忙しくなりそうだ。