『ルパン三世 ワルサーP38』は色褪せない名作 一味違う“シリアス”なルパンに注目

『ルパン三世 ワルサーP38』は色褪せない

 そして本作を語る際に欠かせないのは、ゲストヒロインのエレンの存在だ。ルパンシリーズのゲストヒロインというと『カリオストロの城』のクラリスが一強のイメージだが、クラリスが可憐なお姫様だとしたら、エレンは暗殺集団のメンバーということもあり影のある女性として描かれている。ルパンも見惚れた瞳の美しさが印象に残る一方で、スレンダーな体型を活かした体術を得意としており、アクション面でも視聴者を魅了する。有志のファン投票においてもクラリスの次に選出されやすい。

 生き抜くために暗殺集団に身を寄せながら、弟を殺めた相手を探すという強い意志を持ち、暗殺集団の幹部でもあり、一目置かれている存在のエレン。その一方で年頃の少女のような可憐さも持ち合わせており、島の外に出た時の伸び伸びとした言動に愛らしさを感じさせ、視聴者はエレンに魅了されていく。ラストまで見終わると彼女の辿る運命にも想いを馳せ、忘れられないインパクトを残す、名ヒロインの1人だ。

 本作のテーマは“自由であるために必要なこと”とは何か。島の中にいる暗殺集団のメンバーたちは外に出ることを許されず、それはリーダーのゴルドーも同じであり、一部のメンバーは外の世界での自由を渇望している。

 この作品のテーマを示す名シーンが中盤にある、島を出たルパンとエレンの会話だ。ルパンの語る「自由っていうのも結構面倒なもんでよ、いつも自由でいるためには、やんなきゃなんないしんどいこともあるのさ」というセリフが象徴的だ。ルパン一味は自由であることを心情としているが、その自由であるために過去に決着をつける。

 エレンは囚われの身から自由になりたいと吐露する際に「勝手気ままに生きてきたあんた(ルパン一味)に、私たちの気持ちがわかるとは思っていない」と語るのだが、同時にエレンたちは自由でいるためにルパン一味がどのように行動してきたのか、ということを理解していない。自由に憧れるエレンたちが、自由であるために過去への決着というしんどいことを行うルパンに触発され、そして自由を勝ち取るために行動を起こし、その結果に待ち受ける運命が視聴者の心を掴むのだ。

 もちろん暗殺集団が舞台ということもあり、爆発や体術戦闘、銃での戦闘などアクション描写も豊富であり、その迫力も満点だ。1997年に制作された、24年前の作品ということもあり時代を感じるのでは?という意見もあるかもしれないが、セル画アニメの魅力を発揮し、映像表現を含めて今観ても色褪せない名作だ。いつもと一味違うルパンの魅力と、エレンたちの闘いをこの機会にしかと目に焼き付けてほしい。

■放送情報
『ルパン三世 ワルサーP38』
日本テレビ系にて、10月22日(金)21:00〜22:54放送
キャスト:栗田貫一、納谷悟朗、小林清志、井上真樹夫、増山江威子、津嘉山正種、篠原恵美、内海賢二、緒方賢一
監督:矢野博之
脚本:米村正二
キャラクターデザイン:木崎文智
音楽:大野雄二
原作:モンキー・パンチ
(c)TMS
公式サイト:https://kinro.ntv.co.jp/

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