『ルパン三世』はなぜ愛され続けるのか シリーズ50年の歩みを振り返る 

『ルパン三世』シリーズ50年の歩み

 テレビアニメ『ルパン三世』が、今年2021年に50周年のアニバーサリーを迎える。制作会社のトムス・エンタテインメントは、YouTube公式チャンネルで過去のシリーズの傑作選を配信したり、50年の歴史を振り返るイベントを開催したりと様々な催しを仕掛けている。また放送局の日本テレビでは、ファン投票で決める人気エピソードの選出を専用サイトで呼びかけ、その上位作品を『金曜ロードショー』の枠で放送するなど、各所でルパンの50周年を盛り上げる動きが見られる。そこで昭和から平成、令和にまでまたがって長く愛される『ルパン三世』の歴史をおおまかに振り返ってみたい。

 漫画家モンキー・パンチの連載を原作としたテレビアニメ第1シリーズ(以後『PART1』)は、1971年に放送開始。大隅正秋(現・おおすみ正秋)が演出したハードボイルドな前半と、Aプロダクション演出グループ名義で宮崎駿・高畑勲が手がけたコミカルな後半、異なる作風のブレンドにより、ルパンはクールな殺し屋の顔と、愉快な怪盗の2つの顔を持った。そのどちらもルパン三世という人物に違いないのだが、敵の射殺も厭わない『PART1』前半の非情な雰囲気をこよなく愛するファンは根強く、前述の金曜ロードショーの人気投票ランキングの結果発表で、『PART1』のエピソードが上位10位中、5本も選ばれている。

PART2・第145話『死の翼アルバトロス』原作:モンキー・パンチ(c)TMS

 70年代後半から起きたリバイバルブームに乗って、過去の人気アニメのリメイクが数多く制作されたが、ルパンも1977年に新たなスタッフによる第2シリーズ(以後『PART2』)が始まった。夜7時台の放送ということもあり、大衆受けしやすいコミカルさ、当時の流行を取り入れた時事ネタも盛り込んで放送は3年に及ぶ人気作に成長。『PART2』放送期間中に2本の劇場用作品も公開され、その2作目『ルパン三世 カリオストロの城』(1979年)の制作スタジオ、テレコム・アニメーションフィルムも最終クールからローテーションに加わることとなる。このテレコム担当回の中でも、宮崎駿が照木務(てるき・つとむ=いうまでもなく“テレコム”のもじり)の名前で演出した2本は完成度が高く、ファンの間でも何かと話題にのぼるが、一方で『PART2』の通常回と違うキャラの絵と雰囲気に、この2本をイレギュラー的な作品と見る向きもある。しかしトータル的にスラップスティック・コメディからハード路線のドラマをカバーした『PART2』は多くの新規ファンを獲得し、商業的にも大成功を収めたと言えるだろう。

 関東のテレビ局、日本テレビ主導で製作・放送された『PART2』と異なり、『PART1』同様に大阪に拠点を置く読売テレビが製作したテレビアニメ第3シリーズ(以後『PARTIII』)が1984年からスタート。プロ野球のナイター中継で途切れ途切れの放送となった上に、関東地区では長らく再放送の機会に恵まれなかったせいで印象が薄い作品であるが、ポップなキャラクターの絵柄と自由度の高い作画を支持するファンはアニメ業界にも多く存在し、決して不人気作というわけではない。夜7時台のゴールデンタイムに放送されたテレビシリーズは、現時点ではこの『PARTIII』が最後の作品になっている。

 『PARTIII』の放送終了後、テレビシリーズはしばらく休眠期間に入るが、『あしたのジョー2』(1980年)や『コブラ』(1982年)で知られる出崎統監督が担当した単発スペシャル『ルパン三世 バイバイ・リバティー・危機一発!』(1989年)が高視聴率を取ったため、不定期放送ながら2時間スペシャルの恒例化が決まる。2時間スペシャルは2021年現在まで27作品(『名探偵コナン』とのクロスオーバー企画『ルパン三世VS名探偵コナン』も含めれば28作)が放送されているが、監督、脚本、作画スタッフが流動的なため、全部が全部粒揃いとはいかず、中には短期スケジュールで制作されたものもあって出来にムラがあるのは事実だ。ルパンが財宝の鍵を握るヒロインを守りつつ、世界を牛耳ろうとする死の商人と戦う定型化された内容のものも多い。しかしそんな中にも、コミカルな要素を極力排したダークな雰囲気が光る『ルパン三世 ワルサーP38』(1997年)、ルパン一家結成の成り行きを虚実ないまぜに描く『ルパン三世 EPISODE:0 ファーストコンタクト』(2002年)、スタジオジブリ作品の作画監督、佐藤好春をキャラクターデザインに迎え、不老不死の人魚伝説を絡めた『ルパン三世 血の刻印 ~永遠のMermaid~』(2011年)など、意欲作、秀作も生まれている。

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