『ルパン三世 ワルサーP38』は色褪せない名作 一味違う“シリアス”なルパンに注目

『ルパン三世 ワルサーP38』は色褪せない

 『ルパン三世』シリーズほど作品が数多くあると、やはり人気が偏ってしまう。劇場版であれば『ルパン三世カリオストロの城』であったり、テレビアニメシリーズではPart2の『死の翼アルバトロス』などの宮崎駿が関わった話や、Part1の『脱獄のチャンスは一度』や『7番目の橋が落ちるとき』などが、特に話題にあがりやすいか。

 TVアニメシリーズのルパン三世は1985年に放送終了した『ルパン三世 PARTIII』から、新作はしばらくの間放送されていなかったが、その間にも劇場版やTVスペシャルが放送されることで、変わらぬ人気者としてお茶の間の支持を集めた。

 金曜ロードショーで放送されるTVスペシャルシリーズは、一度しか放送されないこともあり、爆発的な人気を得たとは言い難い部分はある。それでも、多くの傑作がこれまで作られてきた。各キャラクターを深掘りするような作品もあり、銭形に着目しコミカルな雰囲気も漂う『ルパン三世 炎の記憶〜TOKYO CRISIS〜』など多種多様なラインナップが並んでいる。毎年違ったテイストで制作されており、変装の名人であるルパンのように様々な顔を見せてくれる、自由度の高いシリーズであることを再認識させてくれた。

 そんな本命なきTVスペシャルシリーズの人気投票を制したのが、1997年に放送された、TVスペシャルシリーズ第9作目にあたる『ルパン三世 ワルサーP38』だ。こちらはルパンシリーズの中でも異色作といわれており、隠れた傑作として、ファンからも高く評価されている。監督は劇場版『アンパンマン』シリーズを多く手がける矢野博之、演出は後に『機動戦士ガンダム00』の監督となる水島精二が務めている。

 『ワルサーP38』はシリアスなルパン像に着目した作品だ。ルパン三世の名を騙る暗殺集団が現れ、その手にはかつてルパンが愛用していたシルバーメタリックのワルサーP38が握られていた。その因縁に決着をつけるべく、とある島を根城とする暗殺集団にるルパンが接触していく、という物語だ。普段コミカルな立ち位置になりやすい銭形は冒頭で撃たれ入院し、物語にはあまり絡まないことでも、よりシリアスなルパン像が目立つ作品となっている。

 本作を初めて観る際に、目につくのがテレビシリーズから変化したキャラクターデザインだろう。近年放送されているTVアニメシリーズ(PART4以降)は原作を踏襲した劇画調のキャラクターの印象を受ける。またそれ以前のTVスペシャルシリーズの絵にはコミカルな印象を持つようにルパンのサル顔が強調されるなどのデフォルメがされているが、今作は目は小さくなっており、顔や体もスタイリッシュで、劇画とも違うリアルな人間に近い印象を受ける。このルパンらしさを活かしながら造形されたキャラクターデザインも、本作のシリアスな作風を作るのに一役買っている。

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