『おかえりモネ』ご都合主義にならない安達脚本のヒロイン像 百音と亮の対比も浮き彫りに

『おかえりモネ』百音と亮の対比が浮き彫りに

 最終話に向けて、百音(清原果耶)が取り組まなければいけない課題が見えてきた『おかえりモネ』(NHK総合)第99話。前話のラストの亮(永瀬廉)の刃渡り30センチくらいありそうな鋭い言葉が、再び百音とテレビの前の出戻り組に突き刺さって幕が開けた。

 寝ていたはずの三生(前田航基)たちも気づいたら起きていて、その場の空気は最悪そのもの。そこに入ってきたのは、亜哉子(鈴木京香)だった。「あまりいいお酒じゃないね」というその場の収め方も、さすが先生をやっていただけあって上手い。龍己(藤竜也)の静止も振り払って亮の言葉を止めさせたのは、娘の百音がこれ以上傷つかないためだけではない気がする。その場にいる他の人間、特に“言ってしまった”亮自身がこれ以上誰かを傷つける言葉を続けないよう、守ろうとしたのではないだろうか。

 今回の件で、改めて亮が震災以降ずっと辛い思いをしてきた人物であると同時に、百音との対比関係にあることがわかった。どちらも違う形で心に傷を負ったが、家族を失いアルコール中毒の父・新次(浅野忠信)の面倒を見ながら地元という土地から出ることを許されなかった亮と、5年半その場を立ち去り自分の好きなことに挑戦して夢を叶えるといった“選択肢”を持っていた百音。気仙沼に来る直前、ウェザーエキスパーツで行ったプレゼンで彼女は台風の被害に遭った実家の復旧についてこんな風に触れていたのを思い出す。

「本当は大変なのに、みんなお祭りの準備をしているみたいで。しぶとくて、格好よかったんです」

 百音の感じる地元に貢献したい気持ちも間違いではないし、負った傷の深さを競うというわけでもない。しかし、震災以降何度も立て直してきながらも、再び災害にあったり元に戻せなかったりと歯痒い思いをしながら復旧する様子を、“無意識に、悪気なく”お祭りの準備に例えてしまう点が百音の課題かもしれない。

 もう一つ、百音の課題が気仙沼中央漁協組合長の太田滋郎(菅原大吉)とのやりとりを通して浮かび上がった。「アワビの開口」という漁師にとってのビッグイベントを巡り、百音は予測の手伝いがしたいと慈郎に詰め掛ける。何度も断られているのに、一向に引き下がる気配もない百音は「だからねえ、あんたしつこいよ?」と怒られてしまう。

 百音のアイデア自体は悪くない。しかし、頑張り方というかアプローチの仕方に問題がある気がする。もともと、この開催日は天気を読むのが一番上手い漁師が決めている。つまり百音が正確な“データ”を叩きつけることは、その道のプロに対して不十分だと言っているような、失礼とも受け取られかねない動きなのだ。

 だから、そうならないために直接組合の人たちとコミュニケーションを取り、まず関係を築く必要があるのではないだろうか。何より彼らからしたら、百音は“外部の人間”なのだから。百音が東京で学んできた気づき、学びも無駄ではないが、むしろ会社を離れる際に彼女が最も重要視していたウェザーエキスパーツのデータばかりに囚われているようにも思える。登米の時に行っていたフィールドワーク的な考えを、今こそ取り戻す時だ。

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