『密告はうたう』重苦しいムードに光る松岡昌宏の意志 信じないことで辿り着く真実とは

『密告はうたう』信じないことで辿り着く真実

 松岡昌宏主演の警察ミステリー『連続ドラマW 密告はうたう 警視庁監察ファイル』がいよいよ佳境を迎える。

 「警察の中の警察」とも称される警視庁人事一課(通称:ジンイチ)に一通の密告文が届く。人事一課に属する主人公が元同僚の監察を命じられるが、行動確認(通称:コウカク=尾行)を続けるうちに、未解決の殺人事件、同僚の殉職事件、そして警察内部の思惑に突き当たる。これまでの刑事ドラマとは一線を画した、重厚かつ濃密なハードボイルド・サスペンスだ。

 過去と現在の3つの事件を行き来しながら多くの人物が登場し、複雑かつ緊迫感あふれる人間ドラマが展開する本作。これまでの展開を振り返りながら、第5話の見どころを探っていきたい。

2年前と5年前の未解決事件

「市民にとって警察は最後の砦だ。その警察を取り締まる我々は、砦の最後尾を守っている。後ろにはもう誰もいない」

 こう語るのは、人事一課監察官の能馬慶一郎(仲村トオル)。犯人を追うのが捜査一課の役目だとすれば、警察の不正を追うのが人事一課の役目。警察内部で蛇蝎のごとく嫌われている人事一課に、元捜査一課の佐良正輝(松岡昌宏)が配属されたのは1年前のこと。同僚たちから「身内の首刈り」「裏切り者」などと罵倒されながら、粛々と職務をこなす佐良。そんな折、人事一課に一通の告発文が届く。府中免許試験場に勤務する皆口菜子(泉里香)が不正に機密データを漏らしているというのだ。佐良は係長の須賀透(池田鉄洋)とともに、皆口の行動確認を始める。

 本作には3つの大きな事件が登場する。まずは2年前の「トーマツ産業事件」。海外への技術提供に反対する社長が殺害された事件だ。佐良は捜査一課でバリバリ活躍していた刑事で、皆口は同じ事件を担当する吉祥寺署の所轄の刑事だった。そして、もう一人、佐良の後輩であり、皆口の婚約者でもあった捜査一課の斎藤康太(戸塚祥太/A.B.C-Z)が深くかかわっている。

 佐良と皆口と斎藤は、斎藤が得た証言をもとに単独で捜査を進めようとしていた。しかし、どこからか情報が漏れ、捜査は失敗。事件に関与していたと見られるトーマツ産業の社長らは殺害され、斎藤も殉職した。佐良は「部下を守れなかった男」のレッテルを貼られて人事一課へ異動となるが、ほかの責任者は誰も処分を受けなかった。ただ一人、皆口だけが運転免許試験場へ左遷され、捜査情報を漏らしたと警察内で噂されていた。

 皆口を行確していた佐良と須賀は、皆口の不審な動きをキャッチする。彼女が接触していたのは情報屋の佐々木(アキラ100%)だった。

 ここで2つ目の事件が登場する。5年前の「目白駅ホーム殺人事件」だ。終電間際の目白駅のホームで男性が刺殺された事件で、捜査にあたったのが池袋西署にいた佐良と皆口、彼らの先輩刑事の宇田邦弘(三浦誠己)である。事件は未解決のままとなり、宇田と署長の梶原(甲本雅裕)は高井戸署へ異動。事件は捜査一課からやってきた新穂(ブラザートム)ひとりに引き継がれた。

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